傾向は違うもののそれぞれ問題ある性向をしていることから「小市民」を志している小鳩君と小佐内さんの物語、第3弾。今回は上下巻構成。
夏期の事件を経て「互助関係」を解消した小鳩君と小佐内さん。2人の過ごしたおよそ1年が、それぞれに恋人もでき青春を満喫しているように見えるものの、やっぱりもって生まれた性分との折り合いをつけるのはなかなか難しく……という感じの日常パートと、市内で頻発する放火事件を追う新聞部のパートを織り交ぜて語られます。
まぁなんというか、人間失格とまでは言わないけれど、「普通の人」と一緒にいることで「狐と狼」の特徴がより際立ってたなぁ、という感じでした。特に、狼さんの行動は狐さん以外のフィルターを通して描かれるので、何を目的として行動しているのかが今一つ読み切れず、事件の裏にちらつく影に「ないだろう」と思いつつもつい深読みしまくってしまいましたよ。ちなみに、狼さんの行動の全ては〆の一言でものすごく納得。マロングラッセと栗きんとんのたとえもああなるほど、とこれまた納得。あとそれから、2人(というか小鳩君)にそれなりに頼りにされ、それなりに付き合うことができている健吾君はやはり良い奴だと思ったです。
で、新聞部パートの主人公とでも言うべき瓜野君は、あーうん若いねーという感じで始終生暖かい視線を送っていたのですが、下巻終盤でその自尊心が木っ端微塵にされてしまうのは哀れというかなんというか。でも、自業自得だから仕方がないよね(身も蓋もない) 狼さんに不用意に手を出したら咬みつかれてしまうのは道理なのですよ、うん。
さて、高校生活も残り僅か。以前とは少し似て異なる事情からコンビを復活させた小鳩君と小佐内さんの関係はどうなっていくのか。続く冬期の物語が楽しみです。