長年争い続けた二つの部族、「雪蟷螂」フェルビエと「死人狂い」ミルデ。雪に閉ざされた厳冬の山脈で、彼らの間を吹き荒れた、過去と現在の恋物語。
読了後にまず思ったのは、「これは題名通り、最初から最後まで「雪蟷螂」たちの物語だったなぁ」という一言でした。
文章の流れや言葉の選び、そしてそれらの相乗効果で生み出される雰囲気はさすがに巧いと思いました。しかし、話そのものは個人の好みの問題もあるでしょうが、正直ぴんとこなかったかも。なんというか、心の動きが丁寧に描写されているようでわりとがががっと動いて「えええー。」と戸惑うことがあり。最後に登場人物たちが選んだ結論も「えええええー。」という感じで。あとそれから、もう一方の当事者であるはずのミルデ族側が置いてきぼりにされてないか?みたいな印象がぬぐい切れず……。
そんなこんなでわりと引っかかるところが多く、さらについでに登場人物の誰かに入れ込むことなくどこか距離を置いた視点で最初から最後まで読んだため、綺麗な話だよなぁとは思いつつ、この素材ならもっといろいろとつっこめるはずなのにもったいないなぁ、という印象が残りました。……つーか、これ書いてる途中で物足りなかったところをあれこれ考えてて、要するに私はライトノベル版『黄金の王 白銀の王』を期待してたってことなのかなーとぼんやり思った。しかし、作品の指向性が全く違うんだから、それは無理だよね……。
ともあれ、この作品で「人喰い」三部作完結とのことで。次作はどのような話が紡がれるのか、興味を感じるところです。