長編伝奇シリーズ「封殺鬼」。若干14歳にして神島の当主となった少女・桐子をメインに据えた昭和編・「鵺子ドリ鳴イタ」第4巻。
読後の感想としては、期待通りに安定して面白かった、というところ。そしてこの作者さんの文章の呼吸というか、シリアスしている途中にちょっと笑えたり息をつける場面を挟んでくるタイミングが結構好きだと、唐突に気がついた。弓ちゃんの朗読(+盛大に墓穴を掘った形の桐子の嫌がり様)とか思わず笑ったしな。
内容としては、3巻から引き続いて真術会と一部軍人の行う狂気の「実験場」での桐子と乙夜の駆け引きやら重傷を負った聖の立ち回りやら妖怪たちのサポートやら、まぁいろいろとありましたが。メインとなるのは、囚われた宇和野ミキの魂を取り戻すために魔人・乙夜の罠に踏み込んだ桐子と、弓生の頼みで援護に乗り出した志郎が、桐子の心の奥底に隠されたモノを垣間見るあたりか。とりあえず、3巻があんな場面で終わってどういうことになるんだと心配しましたが(最近キャンパス文庫のほうも読んだので、弓ちゃんが暴走するんじゃないかとか)、なるほどこういう風に話を持っていくかーという感じでした。それにしても、あの状態から自力で復活する聖はらしいというべきなのか少し悩む。あと、ミキさんを迎えに行った時の会話は、しみじみ良かった。
それから、志郎と桐子の関係はまだ「お友達」段階にもかかわらずニヤニヤした。桐子の抱える洞をしっかりと見て同情するだけじゃなく、厳しいことも言える志郎が格好良く、その言葉をやみくもに拒絶せず、ちゃんと受け止められる桐子もやっぱり格好良かった。この2人は主従という関係でないからこそ、良い関係になってるよなーと思いました。そうそう、桐子の態度が「無意識の甘え」だというあとがきの言葉には深く同意します。
そんなこんなでゆっくりペースながらも着実に話は進んで行き、いよいよ今一つ得体のしれない魔人兄妹との最終決戦が目前に。次巻への期待は否応なく高まっています。