「〈本の姫〉は謳う」、第4巻&シリーズ完結巻。アンガスと仲間たちの冒険とアザゼルとリバティの想いの行方、交差する二つの物語の結末が描かれます。
ちょっと吃驚するぐらい、綺麗にまとまったなぁというのが読後の第一印象。つーか、「現在」のアンガスはまだしも、「過去」のアザゼルの物語がこういう決着をするとは全く思っていなかったです。彼らは悲劇に終わってしまったのだとばかり思い込んでいたので、嬉しい誤算というかなんというか。「いつかあなたに出会うために」というシチュは好物の一つということもあり(何の影響かは言わずもがな)、あの辺のネタばらし&展開はわりあい興味深かったです。他にも、初代アザゼルが「世界」に抱いた想いとか、それまで希望を信じ続けていたアンガスを打ちのめした一連の出来事、最後の戦いでのジョニーの行動、アザゼルとガブリエルの本当の別れなど、見どころは多かったかと思います。個人的好みでいえば、もう少し踏み込んだ描写があればなお良かったのですが。
そういえば、読了後になんとなく表紙を眺めてて気がついたのですが、各巻さりげなく最後の『鍵の歌』の言葉が副題につけられていたんですねー。この歌がどういう状況でうたわれたのかが分かってから、そして終幕の「彼」の言葉を読んでからだと、その歌に、この物語に秘められた想いがさらにじんわり沁みてくるような気がしますね。
シリーズ通して、そこをもうちょっと掘り下げてくれれば!と思うこともしばしばありましたし『煌夜祭』ほどぐっとくることもありませんでしたが、それでもなかなかに素敵な物語でした。次回作もまた楽しみに待とうと思います。