人類と異種知性体「アンゲルゼ」の戦争に、「未孵化」であるが故に一戦力として加わらねばならない少年少女たちと彼らに関わる人々の繰り広げる物語、第3巻。
陽菜は自身の体質の変化に加え、ついに初の実戦にまで参加させられるなど、置かれる状況の過酷さは増しているんですが、それでも1巻当初と比べるとかなり強かになっているというか打たれ強くなってるというか。少しずつでも状況に順応しつつあるのが、容赦のない物語の中で若干の救いになっている、ような気がしなくもない。また、彼女の内面的な変化ばかりでなく、湊や有紗、そしてマリアとの間に築かれていく絆や、変化とともに自分たちから遠くなっていく陽菜に対して焦りを募らせる覚野や楓の姿など、少年少女たちの数々の交流は、それが何気ないものまでも不思議と印象に残りました。なんというか、あー青春だねぇ、という感じで。特に終盤の陽菜と覚野のやりとりというか、もーちゃんの暴走はニヤニヤしまくった。ちなみに、須賀さんが最初に自分で考えていたサブタイはあとがきによると「もーちゃんがんばれ」だったらしいです。内容を大変的確に表しているという意味では素晴らしいと思いますが、あんまりにもそのまますぎて思わず笑った(笑)
一方、大人組にも、敷島氏の副官が本土から赴任してきたことで少なからず波紋が。この副官さん、表面的には人当たりが良いので陽菜はあっさり騙されてましたが(こーいうところはまだまだ甘いよねこの子)、当然のごとく腹黒&策士タイプのようで。この先どういう具合にひっかきまわしてくれるのか、ちょっと楽しみです。
さて、最後の最後に敷島氏がさっくり爆弾発言をしてくれましたが……このあたりは次の巻で少しでもフォローされるのでしょうか。他にもまだまだ謎が多いこの物語が、果たしてどこに向かおうとしているのか。冬予定という4巻が今から待ち遠しいです。
“『アンゲルゼ ひびわれた世界と少年の恋』[須賀しのぶ/集英社コバルト文庫]” への1件の返信