「あちらとこちら」が混じり合う場所、空栗荘を舞台にした、少年の心の成長物語、第2巻。「薄売り」と「夢の交い路」の二本立て。
ずいぶん久しぶりの続編で正直登場人物の設定とかもほとんど忘れていたんですが、読み進めるうちにあーそうそうこういう雰囲気&設定の話だったなぁとだんだん思い出していったので結果おーらい。とりあえず1巻同様、「あちら」と「こちら」の近くて遠い距離、その雰囲気が理屈というより感覚として伝わってくるような描写が好みだなーと思いました。
今回収録されている2編はどちらとも派手な展開はないのですが、その分じんわりくるものがありますね。「薄売り」では、太一の「ありがとう」に対する采菜の言葉に、この子は良い子だなぁとつくづく思った。太一があんな感じなので前途は多難そうですが、まぁ頑張れ女の子(笑) 続く「夢の交い路」では、「薄売り」から眠ったままの大家さんをなんとか起こそうとそれぞれが奮闘(?)することになるのですが……終盤に明かされたあれこれが切なくて仕方がなかったです。そして、古都子さんの「逃げ場にしてはダメ」という言葉が、年長者の言葉としてとても厳しく、同時にとても優しいものとして胸に沁みました。
しかし、この二つの話を通じてなにより嬉しく感じたのはやはり、過去のトラウマから違う場所にしまいこまれてしまった太一の感情が、ゆっくりでも着実に戻ってきている様子、それに伴い太一自身が成長している様子が伝わってくることですねー。おにぎりを作る場面とか、しみじみと良かった。
さて、夏祭りの次は中秋の話になっていましたが。順番に行くなら、3巻は冬の頃が舞台になるのかな。なんにしろ、次はどんな話が紡がれるのか楽しみに、のんびり3巻を待とうと思います。