いきなりシリーズタイトルが変わった『絶代雙驕』邦訳第4巻。3巻が過去編となっていたので、今回は2巻からの続き。鉄心蘭の捨て身の行動で何とか花無缺から逃れた小魚児。江湖で潜伏していた彼が、江別鶴の陰謀を知り……という展開。原書の53章中盤までを消化。
今回収録部分の最初のうちは、鼻っ柱をたたき折られて失意の小魚児の流浪編ということになるのでしょうか。打ちひしがれて一見自暴自棄になっているように見える一方、自分が未熟者だと自覚し武芸の腕も磨くなどしっかり努力を重ねている様子が好印象。この流浪の間の経験や、様々な苦悩、さらに自己研鑽の甲斐もあって、主人公としての魅力は一段も二段も増した感がありますね。
その後、とある出来事をきっかけに小魚児は再び江湖に舞い戻ることになるのですが、そこから始まる小魚児と江別鶴の知略戦がまた見物で。このあたりで展開される陰謀劇では、なにをおいても江別鶴の悪辣さ・外道さが印象に残ります。小魚児もあの手この手で彼の化けの皮をはぎ取ろうとするものの、経験の差か追い詰めきれずに逆に危機に陥ってしまったり。そんなただでさえ手に汗握る展開に加えて、1巻で登場したあとその後が知れなかった小仙女や慕容九妹、黒蜘蛛といった面々やら初登場となる十大悪人やらも話に絡んできて、あっという間に状況がころころ移り変わっていくためにますます目が離せなくなってしまいます。おまけに、鉄心蘭を挟んでの花無缺と三角関係や黒蜘蛛の密かな想いなど、恋愛要素にもにやにや。
……黒蜘蛛と言えば、彼と小魚児のやりとりはなんか無性になごむ。ああそういえば、小魚児って悪人やらとの丁々発止のやりとりはあっても、こういう仲間・友人との気の置けない言葉の応酬ってあんまりなかったっけなぁと今更のように思った。
さて、次巻は巻末の予告からも分かるとおり、小魚児の人格形成に大いに影響を与えた某人々の再登場があるのが楽しみ。……ところで別にいいんだけど、1巻につき大体10章前後のペースで消化しているということは、あの人の登場にはあと3巻ぐらい必要なのか……(なんとなく遠い目)
どうでもいい独り言。帯によればコミック化が決定したらしい。ということは、売れてるの、か……? もしそうならそのまま勢いに乗って、ほかのシリーズも版権買い取って出版してくれないものかなぁ。