個人的にひいき率の高い日本ファンタジーノベル大賞出身の作家氏(『ボーナス・トラック』で第16回優秀賞受賞) 2作目は青春小説で、さて3作目はあらすじによればラブストーリィらしいけど、どんな話だろうというわけで購入。
仕事先で偶然再会した中学時代の同級生、浩介と真緒。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ、いじめられっ子だった真緒は見違えるほど綺麗に変身していた。交流を重ねていく中、二人の関係は次第に親密になっていくが……と、まぁそんな展開。
題名のとおり陽だまりにいるような心地よさというか、ふんわりした雰囲気の程よく甘い恋愛小説で、楽しく読めました。あくまで幸せそうな二人の描写はなんとも微笑ましくてニマニマできるのですが、その一方で時折謎や不安が仄めかされ、いったいこの話はどういう風に幕が引かれるんだろうと思いながら読み進めていたら、終盤になってそれまで話の裏側に潜んでいた要素がひょいと顔を出し。このあたりの展開はもしかしたら賛否両論かもしれないなぁと思いつつ、まぁでもそれで話がつまらなくなったわけでもないし、こういう展開もありかなぁと適当に納得。(ネタバレにつき反転)→最終的にはファンタジーというより、現代日本を舞台にした優しいおとぎ話あるいは志怪小説というほうがしっくりくるかなーと思ったり思わなかったり。←
真緒が隠していた「秘密」は何だったのか。必死でそれを追い求める浩介の姿が切なく、今は他人となってしまった人たちとの駅でのささやかなやりとりとその後辿りついた真相に浩介がとった行動がほんのり涙を誘い、そして彼を最後に待っていた存在がなんとも心に温かい。あの後は一体どうなるのか、いろいろ想像してしまいますね。
“『陽だまりの彼女』[越谷オサム/新潮社]” への1件の返信