『オイレンシュピーゲル肆 Wag The Dog』[冲方丁/角川スニーカー文庫]

 テロの脅威に晒されている都市・ミリオポリスの治安維持部隊MPB遊撃小隊に所属する3人の少女たちの物語、第4巻。

 読了後、今回は両シリーズあまり間をおかずに発売となったおかげで、「スプライト」で上がったテンションそのままに「オイレン」読破できたのが良かったなーとつくづく思いました。2巻のときはそれがちょっと残念だったので。
 で、「スプライト」側とは一見別なようで根っこは同じ事件に挑んだこの4巻。状況の過酷さは負けず劣らず(個人に降りかかった災難では微妙にこちらのほうが酷かったかも。主に陽炎のアレとか)ですが、こちらはより「個人」にスポットを当てている印象だったかな。ある経緯から利益共同者となったパトリック氏と行動を共にする中で精神的に成長し、またレベル3の転送を実行しながらも正気を握りしめ続けた涼月、思いがけない危難やミハエル中隊長への想いなどに揺さぶられながら戦場に立つ陽炎、そしてもはや超能力といってもいいんじゃないかと思うほど他者の心を理解するようになりさらに自身も「痛い」ということを思い出した夕霧と、3人娘がそれぞれにさまざまな出来事によって心と体に傷を負い、悩み考えながら、それでも前に進んでいく姿には胸にこみあげてくるものが。その他、話の本筋では、虚無に喰われた敵の特甲猟兵兄弟、「七人目の証人」、そして短い邂逅の中で彼に手を伸ばし続ける夕霧などが、それぞれ哀しく印象に残りました……。
 「スプライト」組との共同戦線では、あのとき涼月はこんな状況&心境だったのか、といちいち納得しながら読み進めた感じ。「スプライト」で鳳の導き手となったレイバース捜査官といい、今回のパトリック氏といい、2巻で登場した人の影響で「この世界では敵役とまではいかなくても、憎まれ役なのか?」と思っていた(この作品での)某合衆国に所属する人々への好感度が急上昇しました(←単純) 渋くて格好良い小父さまは大好きです。あと、最終戦での陽炎の心の声にちょっと笑った。

 さて、こちらも「スプライト」同様残り2冊で完結となるのでしょうが、そこでどのように彼女たちの「成長と卒業」が描かれるのか。そして、三人娘それぞれの恋はどうなるのか。5巻が今から楽しみです。

作品名 : オイレンシュピーゲル肆 Wag The Dog
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著者名 : 冲方丁
出版社 : 角川スニーカー文庫(角川書店)
ISBN  : 978-4-04-472908-0
発行日 : 2008/5/1

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