全4巻予定の「〈本の姫〉は謳う」、第2巻。 ……どうでもいいけど、全4巻既に書きあがっているということだったので、もうちょっとさくさく刊行されるかと思っていたのですが、案外間が空きましたね……。
それはさておき、今回も世界各地に散らばる力ある文字(スペル)を回収している少年アンガスとその同行者たちの繰り広げる「現在」の冒険譚と、かつての文明が潰えた「滅日」に至るまでをある天使の青年を中心に描いていると思しき「過去」の悲劇が並行して語られていきます。一読した感想としては、「現在」「過去」の両方とも、徐々に盛り上がってきたなーという感じ。それぞれでも十分に楽しめたのですが、二つの話の繋がりも次第に浮かび上がってきて、全体的な流れとしてもなかなか興味深いものがありました。
「現代」パートでは、アンガスがかつて捨てた故郷で起きた、スペル回収に絡む一連の出来事が印象的。アンガスの想像以上に重い過去のこと、そして故郷からの再びの旅立ち(あるいは決別)の場面には言いようのないほど苦いものが……。そちらが辛かっただけに、彼を助け、支えてくれる仲間が今は側にいるという事実がより嬉しく感じられたような気がします。しかし、そこを過ぎてからの展開がどうも駆け足になったように感じられて、それはちょっと残念だったかな。まぁ、あの辺りまであんまりじっくり書いてたら全4巻で収まりがつかないとは思いますが。
もう一つの「過去」パートは、「楽園」を脱した「俺」が地上で「アザゼル」という名を得てそこでの生活に順応していく様や一人の女性と恋がとても良かった。どう考えても先に悲劇が待ち受けていそうなのが何とも切ないですが……それでも、彼らにも何とか幸せになってほしいなぁ。天使との絡みでは、レミエルとミカエルとの別れは泣けました。そして、アザゼルはガブリエルとはいつか再会できるかも気になるところ。
さて、それぞれの物語が極悪なヒキとまでは言わないけれど気になるところで終ってしまいましたが、この先いったいどんな展開が待っているのか。3巻の発売が楽しみです。