『明治波濤歌(下) 山田風太郎明治小説全集10』[山田風太郎/ちくま文庫]

 「海の向こう側」との関わり合いという共通のテーマを持つ中編で構成された『明治波濤歌』下巻。収録3編のうち2編がミステリタッチの作品になっています。
 以下、上巻に引き続いて各中編の簡単な感想。

「巴里に雪のふるごとく」:それぞれの事情でフランスに出向いた川路利良、井上毅、成島柳北。そこで、パリに流れ着いていた日本芸者の殺人事件に巻き込まれて……という話。唯一海外を舞台にした作品で、史実からの登場人物は先にあげた3名に加え、殺人事件の重要容疑者にヴェルレーヌ、発見者にゴーギャンが配置されていたり、ユゴーやゾラといった人たちもちょい役で登場していたり、あとこれは実在の人ではないけど探偵役にパリ市警のルコック警部が登場したり、まぁとりあえず豪華共演という感があります。『警視庁草紙』の影響か、敵役という印象が強い川路氏ですが、今回は日本側探偵役として活躍してくれます。犯人とのやり取りや最後の処断の場面は普通に格好良く、達人並みの示現流の腕前も披露して面目躍如……と言いたいところですが、冒頭で某珍事もしっかり書かれていてはそう簡単にいかないか(笑)

「築地西洋軒」:結婚の約束をした某留学生を追ってはるばる独逸からやってきた某舞姫。なんとか彼女を追い返そうとする留学生の縁者2人だが、舞姫の意志は固い。そうこうするうち、彼女の滞在するホテルで決闘騒ぎが起こり……という話。別に名前を伏せる必要性は欠片もないんですが、なんとなく。とりあえず、決闘騒ぎに隠された思惑をびしばし指摘していく舞姫嬢が素敵すぎ。結末は、史実的にもそうならないといけないし納得できるんだけど、皮肉だねぇと思わず苦笑いしてしまいました。

「横浜オッペケペ」:借金取りに追われて国外逃亡を企てた川上音二郎とその妻の貞奴。しかし、そんな無謀な行動が上手くいくはずもなく、遭難しているところを、たまたま居合わせた野口英世に救助される。その後、成り行きから川上夫妻の面倒を見ることになる野口だが、実は貞奴に恋心を抱いていて……という話(ちなみに、永井荷風も隠れて登場していたりする) とにもかくにも、川上音二郎&野口英世の何を巻き込んででも目的に驀進していく様が強烈。特に初読のときは、野口英世のイメージ(といっても、子供のころに偉人伝で読んだイメージしかなかったけど)が木っ端微塵になるほどの衝撃を味わいました(笑)

作品名 : 明治波濤歌(下) 山田風太郎明治小説全集10
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 山田風太郎
出版社 : ちくま文庫(筑摩書房)
ISBN  : 978-4-480-03350-5
発行日 : 1997/9

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