テロの脅威に晒されている都市・ミリオポリスの公安局要撃小隊(MSS)に所属する3人の少女たちの物語、第3巻。
今巻の内容は、「オイレン」3巻でさらりと、しかし衝撃的な結末とともに語られた事件の始まりから終わりまでを描いたもの。『24』のような形式で進む始終緊迫感のある物語展開や、事件を追う中で伝わってくる登場人物たちの意志や絆の強さに惹きつけられ、最後まで目が離せない感じでした。また、「スプライト」は「オイレン」と比べて個人よりも組織に焦点が当てられているため、舞台となっているミリオポリスを取り巻く様々な思惑や状況がより鮮明に見えてくるのがまた面白く感じられますね。
あと今回は前線部隊だけでなく、後方支援担当の水無月といつの間にか彼女らと深く関わるようになった冬真(一応まだ民間人)の共同行動も見物でした。そんな彼らの前に姿を現した内通者とのやりとりは……嗚呼。
まさかここであの人がああなるとは思ってませんでしたが、あちらこちらにばら撒かれた災厄の種子が既に芽吹きはじめているのは確実なわけで。「オイレン」組とのさらに密接なリンクがあるらしい次巻では、いったいどんな展開が待っているのか。続きが楽しみです。
作品名 : スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝
著者名 : 冲方丁
出版社 : 富士見ファンタジア文庫(富士見書房)
ISBN : 978-4-8291-1973-0
発行日 : 2007/11/1