様々な特徴を備えた種族が暮らす世界で、いかなる種族の特徴ももたない「のっぺらぼう」の少女ベルが己の由来を探す旅に出るまでの物語、第2巻。ところでこの表紙イラストはアドニス、ですよね多分……なんか、イメージと全然違うというか、どうして普通に人間型なのかものすごい疑問……。
それはさておき、今回収録分では「剣の国」を舞台にした神楽の役者が揃う一方、「理由の少女」たるベルをも巻き込み様々な運命が絡み急転していく様が描かれています。
今巻初登場となる王女シェリーは、クライマックスでの印象が強くてすっかり忘れてましたが、そういえば最初はこういう娘だったなーと。この純粋無垢な姫君がベルの影響を受けて、どのような選択をすることになるのか。分かっていても、その場面を読むのが楽しみになります。
それ以外では、やはり序盤の比較的平和で穏やかな時間がしみじみと楽しかったですね。皆でなんだかんだでわいわい仲良くやってる様子がなんとも微笑ましくて。それでも拭いきれないベルの孤独と、似て異なる宿命を背負うアドニスの交流は、その先の展開を知っているとやや複雑な心境にはなりますが……それでも、この2人が惹かれあうのはある種の必然だったのだろうし、難しい。あと、心身ともに傷ついたベルと、ベネット(雌性体)の再会と別離の場面も印象的でした。
さて、一つの悲劇をきっかけに、進む道を違えたベルとアドニス。果たして、彼らの進む道は再び交わるのか。全てを予定調和に組み込もうとする「機械仕掛けの神」とは。そして、ベルは「旅の者」となるための鍵を奏でることができるのか。物語はいよいよ佳境へと差し掛かっていきます。
“『ばいばい、アース II 懐疑者と鍵』[冲方丁/角川文庫]” への1件の返信