いつのころからか鉄塔に心惹かれるようになった小学5年生の少年・見晴は、転校を控えたある夏休み、自宅近くの鉄塔にこれまで気がつかなかったプレートを発見する。そこに刻印されていた数字は「75-1」。この数字をきっかけに、見晴のささやかな冒険が始まった――
鉄塔への愛ゆえに生み出された、第6回ファンタジーノベル大賞受賞作(ちなみに同時受賞は個人的偏愛作家の一人・池上永一) 長らく絶版状態でしたが、出版社を移動しての復刊。
世のさまざまな分野・事物にはたいていファンというか愛好家というかオタクというか、まぁそういう人種が存在していると思うのですが、この小説の主人公・見晴の場合、その対象が「鉄塔」。話の内容は、見晴と弟分で2歳年下の少年アキラの二人が、自転車に乗って鉄塔を辿っていく、要約してみればただそれだけの話なのですが、これが奇妙に面白い。なんというか、描写の端々から子供の頃の視界や思考をちょっと思い出すというか。あと、マニアックな描写に分野は違えど同じオタクとしてちょっと親近感を抱いたりもする。
……まぁ、正直なところ作者氏の鉄塔への愛が滲み出すぎなのは小説としてちょっとどうかと思ったりしなくもないですが、それでも不思議なノスタルジーを感じさせてくれる作品ではあると思います。
“『鉄塔 武蔵野線』[銀林みのる/ソフトバンク文庫]” への1件の返信