エジプト神話「ホルスとセトの戦い」をモチーフに、架空の古代エジプト王朝の王権を巡って繰り広げられる戦いと愛憎の物語、第3巻。
シリーズの中では位置づけ的に外伝。セティが何故簒奪するまでに至ったのか、という話。なお、1~2巻は一般読者を意識したのかかなり抑え目だったJUNE描写ですが、この巻ではリミッターが外れたかのように凄まじいことになってるので、苦手な方はご注意を。ちなみに私はそーいう場面は完全に思考停止して読みました。いや、普通のBLだったら脳内で女性変換して読んだりするんですが、この話の場合は下手にそれをすると悲惨という表現すら生ぬるい事態になるのでそれすらできませんでね……最終的には、「まぁでも天華よりはマシだよなうん」と若干混乱した感想を抱いたり。
戯言はさておき、感想。……えぇと、とりあえずセティがウシルに向ける感情はストックホルム症候群以外の何物にも感じられないのはどうしたものだろう。つーか、今回はセティ側の視点で話が進んでいくので、ウシルの行動が控えめに言って外道以外の何物でもなくなってるのが問題なんだよなー(←だからちっとも控えめになってないってば)
そーいう系の災難を筆頭に散々な目に遭いまくり、貴公子然としたセティが見る影もなくなっていくのは悲惨の一言。それでも、ふとした出来事をきっかけに自分を取り戻し始めていき……「今は何年だ?」と彼が尋ねたときにはなんだか胸にこみ上げてくるものがあります。あと、今回の話で重要な役割を果たすプント国の女王アソは立ち居振る舞いが優雅かつ格好良くて思わず惚れそうになりました。
さて。過去の因縁が明らかになったと同時にまたいくつかの謎が浮上してくるわけですが。果たしてタ・ウィの王権を巡る争いはどのような形で収束していくのか。この時点ではどうにも予想がつきません。初読時には、何とかセティが返り咲いてくれないものかと、(元ネタ的に)無茶なことを考えたなーとちょっと思い出した。