エジプト神話「ホルスとセトの戦い」をモチーフに、架空の古代エジプト王朝の王権を巡って繰り広げられる戦いと愛憎の物語、第2巻。
何度読んでも、第1巻後半からアンジェトの「教育」によって、控えめに言って傲慢で嫌なヤツに成り下がったハル(←ぜんぜん控えめになってないし)にはとことんうんざりさせられます……。まぁ、流石に『妖説太閤記』の秀吉レベルまでには至りませんが。ともあれ、この巻の間はハルが始終そんな調子なのに加えてアンジェトの長老二人の人間として嫌な感じの腹黒さに、自然と敵役であるセティ側に立って物を見てしまいます。つーか実際、なんかこの人実はそんなに悪い人じゃない?というのがだんだん明らかになってくるし。あと、この巻で印象に残っているのはアセト追放の前後かな(神話で言えば、ホルスによるハトホル斬首に相当) この巻の締めくくりとなる一文の、美しくも物悲しさが漂う描写と併せてなんとも哀れに感じます。
さて、ひとまず玉座は手に入れたものの未だ「一の王女」を娶っていないハルには王となる正統性が欠けたまま(玉座は王家に連なる「一の王女」に受け継がれ、「一の王女」の夫が共同統治者として国を統べる、という設定になっている) あくまでハルを道具としてしか見ていないアンジェト族、ハルの現状を危ぶみなんとかアンジェトと引き離そうとする旧知の人々、そして王都を逃れたセティ派の動向など、さまざまな波乱要素を抱えて、物語はまだ続きます。