約1年ぶりの単行本となる米澤氏の新作。ちなみにタイトルは「(ミステリに)淫してみる」という意味らしいです。
一読したところ、タイトルや作者サイトの「過去八冊は、多かれ少なかれビルドゥングスロマンとミステリの割合を比で表すことができましたが、今回はミステリだけです。」という言葉がそのまま具現化した、というような印象。なので当然、古典部や小市民あたりの作風を期待していると思いっきり裏切られることになるかと。
あらすじを簡単にまとめると、高収入のバイトにつられて集まった12人。人為的に作り出されたクローズドサークル――〈暗鬼館〉という名の館に放り込まれた彼らは、そこで「実験」と称した正気とは思えない行為に参加させられることに……という感じでしょうか。これまでの作品と比べ、登場人物の性格や背景に関する描写等がおそらく意図的に削られていたためか、登場人物そのものにはあまり意識が向かず、彼らに振り分けられた役割のほうにばかり目にいってしまった気がする。まぁそれはそれで、この状況とこの登場人物たちからどういう具合に話を動かしていくのかに集中出来て良かったかもしれません。
もっと真面目なミステリ読みの人なら、いろいろと深読みできたり違った読み方も出来て楽しいだろうなーと思いつつ。適当なミステリ読みでも、それなりに楽しめたので満足でした。9月末には古典部の新作が出るようなので、そちらも楽しみに待ちたいと思います。
作品名 : インシテミル
著者名 : 米澤穂信
出版社 : 文藝春秋
ISBN : 978-4-16-324690-1 → 978-4-16-777370-0
発行日 : 2007/8 → 2010/6/10(文庫化)
“『インシテミル』[米澤穂信/文藝春秋]” への1件の返信