架空歴史ファンタジー「流血女神伝」、最終章ユリ・スカナ編第7巻。ネフィシカの元から逃げ出すため、ザカール人たちと交流を持ち始めたカリエ。その交流の中で、カリエの意識は徐々に変化していき、やがてこの国で己に与えられた役割、ザカリア女神の思惑にまで思いを巡らせるようになる。一方、周囲も驚く回復振りを見せたルトヴィア皇帝ドーンだが、破滅の足音は着実に迫っていて……という展開。
えーと、誰もが思ったことでしょうがあえて言わせてください。これ、本当にあと1冊で終わるの? つーか、仮に2分冊にしたとしても全然足りないんじゃないかと思うんですが。どれだけ最終巻に詰め込むつもりなんだ須賀さん……。でも一方で、カリエを中心した「流血女神伝」は確かに収束に向かいつつあるな、という印象も受けました。脱出時の描写なんかは、特に象徴的でしたし。
ユリ・スカナ関連については、ネフィシカの印象が変わったのが自分でも吃驚。いや、根本的な部分は変わってないのですが、なんというか、カリエの意識が変わったからか、この人もそもそも哀れな人だったんだということをこちらも思い出したというか。精神的な支えを得て、少しずつでも君主として成長していって欲しいと思うようになりました。イーダルは……ついにアルガにまで(半分以上)諦められて、この先どうなるのかなぁ。
一方、エティカヤ。バルアンの描写には、彼にとってカリエがどれほど大きな存在で、どれほど傷になっているのか改めて思い知らされました。しかし、この状況だとやっぱりもう再会はなさそう……。後宮でのフィンルとアフレイムの対面は、最初は単純に微笑ましいなーと思ってたのですが……アフレイムの側に、ナイヤがいてくれて本当に良かった、としみじみ思いました。そして、今は無理でも、いつかはカリエのことを理解してあげて欲しいと強く思いました。それにしても、このあたりのシーンを読んでいると子供世代の話も読みたくなってきて困りますねこれ(笑)
最後になりましたがルトヴィア。吹っ切れたグラーシカはかつての凛々しい姿を取り戻したのはいいものの、この状況では死亡フラグ成立していってるように見えて仕方がなかったです。そして、一番安全といわれる南公国でのオーリアとギアスのやりとりに心和んだのもつかの間。よりにもよってあの状況で、それがきますかと絶句。須賀さん、いくらなんでも容赦がなさすぎます……。もはやどうあがいても破滅は避けられそうにない情勢ですが、それでもこの国を想って行動しているドーンたちの苦労を思うと、奇跡を祈らずにはいられません。
泣いても笑っても残り一冊。はたして、登場人物たちはどのような道を進んでいくのか。続きが今から待ち遠しいです。