先日小説トリッパー(朝日新聞社)誌上で無事完結した「柳生百合剣」とか『KENZAN!』(講談社)で連載中の「柳生大戦争」とか、作品を重ねるごとに「これはひどい」との評判がうなぎのぼり(?)になっていく、伝奇小説家・荒山氏の初期短編集。久々に再読したついでに、簡単に感想。
収録されている作品5編のどれもが、控えめに言って「頭おかしいんじゃないかこの人」と思うようなトンデモ小説(←褒めてます) 初期なのでなんだかんだ言いつつまだそれほど酷くないような気がしていなくもなかったのですが、やっぱりこれでも十分すぎるほど酷かったです。どうやら最近のが酷すぎたおかげで判断基準がおかしくなっていたようですな(←しつこいですが、褒めてます)
とりあえず、時々出てくる民明書房をうっかり信じないよう注意しつつ、朝鮮with妖術と柳生というキーワードを押さえておけば万事OKなノリで突き進むのがいっそ清々しいほど。普通こんなこと思いついても書かないだろうというぐらい馬鹿馬鹿しい設定や展開に唖然&爆笑しますが、そういう枝葉を取り払っても伝奇小説として普通に面白く最後まで飽きさせてくれませんし、ふと気がつけば次はどんな手を出してくるのかと(いろんな意味で)のめりこんでいたりするのがなんとなく悔しかったりする。
つーか、本質的には現在個人的贔屓作家トップクラスの宇月原氏のそれと共通している部分が多々あるような気がするんですが、作品から受ける印象は何故か全く違うのは奇想の扱いというか嘘のつき方の差にあるのかな。宇月原氏は奇想をギミックとしてきちんと管理しているのに対し、荒山氏は面白いネタを思いついたらそれが暴走するに任せてるというか、まぁそんな感じ。
作中の諸々についてネタとして笑い飛ばせるかどうかが好き嫌いの分かれ目になりそうな気もしますが、伝奇小説好きならとりあえず試してみれば、また新しい世界が目の前に広がるかもしれません。