GA文庫から復刊中の花田氏の初期作品シリーズ、2冊目。今回は短編集。
収録されている作品はどれも、「大陸」の様々な国で戦乱の時代をそれぞれの立場で生き抜いた人々の姿を描いたもの。ライトノベルらしからぬ、むしろ時代小説・歴史小説を連想させる筆致で描かれる物語は、なんとも渋い。最近の流行と一線を画しているのは言うに及ばず、同じ架空歴史モノの代表格「アルスラーン戦記」や「流血女神伝」等ともまた違う、硬質で落ち着いた面白さがあるというか。
収録されている作品で一番印象に残ったのは、「架橋」。九十六度も戦場から生還し、「戦場の主」と傭兵たちから畏怖される老傭兵。その最後の仕事となったある架橋戦を描いた話なのですが、これがまた渋いというか親父さんが格好良い。戦場を去るときの描写に、また味があるんだよなぁ。あと、書き下ろしの「策士の弟子」は数年ぶりの「大陸」新作にも関わらず、ブランクを感じさせない出来で満足いたしました。
さて、次巻『大陸の嵐』で「戦塵外史」シリーズ復刊分は全て刊行されることになりますが……やっぱり雑誌収録分(特に「最後の仕事」)もまとめて読みたいので、新短編集の発売に淡い期待を抱いてます。
作品名 : 戦塵外史 二 八の弓、死鳥の矢
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著者名 : 花田一三六
出版社 : GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN : 978-4-7973-3777-8
発行日 : 2007/2/14