第17回日本ファンタジーノベル大賞・大賞受賞作の続編。
今回はタイトルからも分かるように芥子の花、つまりはその実から精製される阿片に絡むもので、江戸国から流出したとされる阿片の出所を探ることになった長崎奉行馬込播磨守こと「金春屋ゴメス」と部下たち。探索が進むうち、思いがけず大きな影も浮かび上がり……という展開。
1作目と同様に、あっさりした文章で読みやすくて面白かったです。しかし、「今より少し先の未来、様々な要因が重なって独立した江戸国(ちなみに前身は老人タウン。地理的には北関東から東北の一部。)」という設定のわりに、登場人物たちが江戸の生活に馴染みすぎというぐらい馴染んでいることもあって、つい普通の時代小説のつもりで読んでしまうのは良いことなのか悪いことなのか。勿論、ふとした拍子に日本を含めた「外国」の影響やらなにやらが見えてくることも多々あるのですけど。
登場人物は、辰次郎や松吉をはじめ「裏金春」で勤める面々や北町奉行などは1巻と比べてもまた味が出てきてよかったのですが、奈美がやや影が薄くなってたのは残念だったかも。つーか、1巻時点ではてっきり彼女がヒロイン格なんだと思ってたのですけどねぇ。その予想を裏切って、辰次郎が女剣士・朱緒と良い感じになったのにちょっと驚きました。
それにしても、今回の事件の実行犯どもは駄目駄目としか言いようがないですな。1巻の場合は、「それって本末転倒って言いませんか?」とツッコミ入れたい気分にもなりつつも、彼らなりに主義主張や信念もあったわけで、それに比べると……ねぇ。
さて、今回の実行犯と結託していたと思しき黒幕の思惑や、その影で見え隠れする諸外国の干渉を乗り越え、江戸国は独立を守ることができるのか。そして辰次郎と朱緒の仲はどうなるのかなど、続刊が普通に楽しみになる幕引きですね。