お伽噺や童話をモチーフにした現代あやかし譚、第3巻。収録作は雑誌掲載分の「Last Snow」と「その髪は彼が為に」、そして書き下ろし「虎神の羽衣」の3作品。ちなみにモチーフになっているのは順に白雪姫、ラプンツェル、羽衣伝説です。
人魚刀をめぐる因縁に(一応の)決着がつく「Last Snow」は……うーん、悪くはないんだけどちょっと駆け足過ぎた印象。それでも、プリンスの亡き妻への愛情や執着やその他諸々がないまぜになった想いは、彼がどの道辿ることを約束されていた結末のこともあってか、哀れながらも切なく感じられて良かったですが。「その髪は彼が為に」は、このシリーズはまさかホラーっぽい結末はあるまいと思っていただけに、意外な終幕に思わずひやり。彼女、この後どうなるんでしょうねぇ……。一方、それとは対称的に書き下ろしの「虎神の羽衣」は後味の良い話でした。こちらは終盤まで「これはまた切ない終わり方になるんだろうか」とやきもきしていたので、いつもどおり適当に言い繕った黄龍の台詞をきっかけに、あの二人がそう遠くない先に添い遂げられそうな方向に動いたことに一安心。
さて、雑誌では今月号で最終回を迎えたこのシリーズ。確か、ストックは1話のみのはずだから、次の巻では書下ろしが多めになりそうか。これまでのパターンからいけば、最後の四神がらみの話になるのかなーといろいろ想像を巡らせつつ、最終巻を楽しみに待ちたいと思います。