『マーベラス・ツインズ契4 貴公子の涙』[古龍/GAMECITY文庫]

 『絶代雙驕』邦訳第7巻。「江小魚を殺せ」という命令に疑問を覚え、師に理由を問うべく移花宮に戻った花無缺。2人の戦いを止めたいと願う鉄心蘭も移花宮を訪ねていたが、邀月宮主・憐星宮主は共に不在で目的は果たせず、さらに突然の敵襲に対することになる。一方、育ての親の十大悪人たちを助けるために亀山へ向かった小魚児。十二星相の一人・魏無牙の住処に踏み込んだ彼は、相変わらずの機転に加えて思わぬ助力も得て難局を乗り越えていく……というような展開。原書の91章まで消化。

 物語はすでに折り返し地点を過ぎ、そろそろ双子の捻じれた運命やさまざまな思惑など、これまでの伏線が収束を……とか言えればいいんですけど。既存の登場人物は勿論、この期に及んでまた追加された登場人物たちがそれぞれひっかきまわし、さらに二転三転を繰り返し、時には思わぬ方向に進んでいく展開は、本当にあと少しで終わるのかこれ、という勢いです。特に今回初登場組は、魏無牙の養女にして医者の蘇桜を筆頭に、一筋縄でいかない人が多かった上に、主なターゲットになるのが清廉潔白の代名詞ともいえる花無缺で。武芸では劣らずとも、搦め手から攻められて命の危機に陥っていく彼には、先を知っていてもハラハラしました。小魚児も小魚児で危うい場面は何度もあるのだけれど、こいつなら大丈夫だろうと思わせる雰囲気があるので、そういう意味では彼の場面は安心して読めるんですよねー。……そういや、女の敵な江玉郎は今回もその下劣さを披露してくれるので、随所でむかつきました。それだけに、蘇桜の例の行動はすっきりしたというか、GJ!と思ったです。

 また、若者たちの恋愛模様も大小様々に動いてます。大きいところでは、やはり蘇桜の登場でしょう。ただの自信家&高飛車な女の子かと思いきや、p.251-252にかけてのきっぱりはっきりした発言や一筋縄でいかない数々の行動、そして小魚児と舌戦で対等に渡り合うなど、今までのヒロインたちとはちょっと違った魅力が素敵です。あと、今回もまた切なかった花無缺の鉄心蘭への一途な愛の描写。しかし、これまでは花無缺からの一方通行でしたが、今回は江玉郎に襲われそうになった鉄心蘭が無意識に花無缺に助けを求める等、彼の想いが少なからず報われたような場面もあってニヤニヤ。一方、玉郎に良いように扱われて傷つきながらも彼に従う鉄萍姑は、気の毒ではあるんだけど……一応同性の身としては、馬鹿だなぁと思ってしまう部分もあるというか。お嬢さん、目を覚ましませんかぐらいは言いたくなってしまいますな。

 さて、残すところあと36章。再度シリーズタイトルも変更して、物語はいよいよクライマックスへ……って、ケータイ配信って何だーっ!(注:巻末予告情報) うぅ、電子版から間隔が多少開いてもいいから、紙媒体でもちゃんと発売してくれるよなぁと不安を抱きつつ、とりあえず続報を待ちたいと思います。…………いざとなったら直接問い合わせてやる(目が本気)

作品名 : マーベラス・ツインズ契4 貴公子の涙
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著者名 : 古龍(川合章子:訳)
出版社 : GAMECITY文庫(コーエー)
ISBN  : 978-4-7758-0676-0
発行日 : 2008/12/18

0812購入メモ(その2)。

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冬太り。

ここしばらく、諸事情あって全く運動できない状態になっているのですが。
案の定というか、体重が見る間に増加してきてます。(つーか、食べすぎなんだよ自分)
いやまぁ、体重が増えるのはまだ仕方がないにしても、なんというかこう、動いてない分体に締まりがなくなってるというか、ぱっと見で「うわ、太った!」と思うのが嫌だなぁと。
何とか体を動かしたいところですが、来月頭ぐらいまでは現状のまま、ほとんど運動できそうにないしなぁ。嗚呼、今までせっかく頑張ってたのにorz

WordPress2.7にアップグレード。

リリースされてたのでサクッと。今のところは不具合なし。
本体ファイルの変更はRC1の時と同じなので省略。

WP2.7-RC1から使っての感想。
アップグレード前は、管理画面の操作がややこしくなったりしてないかと不安もありましたが、別にそんなこともなくて、わりとすぐ慣れたかな。
つーか、全体的に便利になってると思う。とりあえず、使わない機能がある場合に手軽に画面から削れるようになったのが、個人的には嬉しい変更だな。

『翼の帰る処(上・下)』[妹尾ゆふ子/幻狼FANTASIA NOVELS]

 まずタイトルとあらすじに興味を惹かれ、加えて作者さんも堅実なファンタジーの書き手として信頼があったので購入してみた。
 内容は、一言で言ってしまうと病弱中年官僚(中間管理職)ヤエトの奮闘記、となるでしょうか。……こう書くとコメディっぽくなるのがアレなんですが、内容はいたって真面目。購入時の期待に違わず、硬派といってしまうとちょっと違う気がするけれど、土台がしっかりとしたファンタジーでとても面白かったです。
 北嶺への左遷を喜んでいた隠居願望持ちの病弱中年官吏が、何の因果か太守として赴任してきた皇女の副官に任じられてしまい、おまけに生来の性格やら必要に駆られたりやらして仕事をこなしていくうちに周囲の信頼を得ていって……というのが上巻のざっくりした流れ。その基本的なラインに加えて、登場人物紹介や設定開示を適宜行いつつあれこれ伏線も仕込んでおき、下巻ではそれらの要素が巧みに組み合わされてさらに話が広がっていきます。読了後、すとんと心に落ちてくるタイトルが素敵だなぁと思った。

 話そのものはもちろんのことですが、登場人物もそれぞれ個性的かつ魅力的な人々が揃っていて、彼らの関係やちょっととぼけた会話なども楽しかったです。中でも一番楽しかったのは、病弱すぎるのも手伝って周りに放っておけない気にさせるヤエトの無自覚人たらしぶりかもしれない。本人の夢を思えば得なのかどうか微妙なところですが(笑) あと、ヤエトと皇女の関係は、果たしてどのような名がふさわしいのかいまだはっきり見えないものの、少なくとも危ういものは感じられず。この二人なら、と思わされるものがあるというか……まぁなんというか、妙に安心できる組み合わせだったなーと。中でも、帝国の後継者争いに端を発する一連の危機の中、皇女に仕掛けられた呪いを解くために療養(?)先の都から北嶺へ帰ろうとするヤエトの姿と想いが、とても良かったと思う。他にも、良い味出してた年長組とか、皇妹とルーギンの関係とか、伝達官とか、あれこれ語りたいことはあるんだけど長くなるので省略。

 ヤエトと皇女にとって一つの転機となったエピソードとしては確かに完結しているけれど、北嶺の今後やこの先も激化していくだろう後継者争い、そして蘇りつつある古き神の力など、まだまだ気になることはたくさんあるなーと思っていたら、どうやらシリーズ化が決定したようで。続編ではどんな展開になっていくのか、楽しみです。

作品名 : 翼の帰る処(下)
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著者名 : 妹尾ゆふ子
出版社 : 幻狼FANTASIA NOVELS(幻冬舎)
ISBN  : 978-4-344-81493-6
発行日 : 2008/11/28