『鳥は星形の庭におりる』[西東行/講談社X文庫ホワイトハート]

 最初はノーチェックだったのだけれど、あらすじを読んでちょっと面白そうかなーと思ったので購入してみたホワイトハートの新人さんの作品。

 内容は、霊鳥が降りてくるという伝承が残る塔を巡る謀に、その聡明さゆえに家族の中で孤立しがちな貴族の少女・プルーデンスと蒼い衣をまとった名無しの吟遊詩人が巻きこまれていく、という感じ。とりあえず公式のあらすじは煽りすぎというか、全体的にあまり派手な話ではなかったと思います。しかし個人的には、ひょいと顔を出す世界設定や作中の雰囲気がわりと好みだったこともあり、普通に楽しめました。あと、どこぞの豆文庫とは違って無理にシリーズ化前提とはせずに、これ一冊できっちりかっちり完結しているのも地味に好印象(舞台と登場人物さえ変えれば、また別の物語は生まれそうだけど)
 登場人物では、プルーデンスがとにかく良かったですね。驚くほどの聡明さと歳相応な感情の狭間で揺れながらも、最後まで自分の進む道をしっかりと考え行動していく姿がとても素敵でした。こういうタイプのヒロインはとても好きだ。一方、そんな彼女の相方となる吟遊詩人は飄々としてるというか……彼個人がどうというより、プルーデンスとの関係や彼女に対する感情の変化が良い感じだなーと思いました。
 僅かとはいえ共に過ごした時間の中で、二人が互いに抱いた想いが感じられるからこそ、最後の場面はちょっとしんみり気分。……まぁでも正直、あの○○はちょっとどうなんだーと思ったりしましたが(笑)

 ともあれ、地味めの話ではありましたが、登場人物の魅力もあってなかなか面白かったです。次回作も期待。

作品名 : 鳥は星形の庭におりる
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 西東行
出版社 : 講談社X文庫ホワイトハート(講談社)
ISBN  : 978-4-06-286587-6
発行日 : 2009/3/5

0903購入メモ(その1)。

『大江戸神龍伝バサラ!1 龍、覚醒せり。』[楠木誠一郎/角川つばさ文庫]【amazonbooplebk1
『封印の女王 忠誠は恋の魔法』[遠沢志希/角川ビーンズ文庫]【amazonbooplebk1
『鳥は星形の庭におりる』[西東行/講談社X文庫ホワイトハート]【amazonbooplebk1
『身代わり探偵スピカ 逢いたくても逢えない相棒』[ココロ直/集英社コバルト文庫]【amazonbooplebk1
『イリアディスの乙女 封印の巫女と夜の神』[神埜明美/集英社コバルト文庫]【amazonbooplebk1
『嘘つきは姫君のはじまり 恋する後宮』[松田志乃ぶ/集英社コバルト文庫]【amazonbooplebk1
『エノーラ・ホームズの事件簿 消えた公爵家の子息』[ナンシー・スプリンガー/小学館ルルル文庫]【amazonbooplebk1
『砂漠の狐を狩れ』[スティーヴン・プレスフィールド/新潮文庫]【amazonbooplebk1
『秋期限定栗きんとん事件(上)』[米澤穂信/創元推理文庫]【amazonbooplebk1
『鹿鼎記4 二人の皇太后』[金庸/徳間文庫]【amazonbooplebk1

『栗きんとん(上)』は2月購入分だったりするけどまぁそれはそれで(適当)。
エノーラ・ホームズは新刊出るたびに気になりつつメアリー・スーものじゃなかろうなと疑って手を出してなかったのですが、TLでsoundseaさんに大丈夫とお墨付きをもらったのでとりあえず1冊目を購入してみた。

0902購入メモ(その2)。

『鴨川ホルモー』[万城目学/角川文庫]【amazonbooplebk1
『若さま侍捕物手帖 人魚鬼』[城昌幸/徳間文庫]【amazonbooplebk1
『黙星録2 慟哭は世界の爪痕』[荻野目悠樹/ハヤカワ文庫JA]【amazonbooplebk1
『星虫年代記1 星虫/イーシャの舟/バレンタイン・デイツ』[岩本隆雄/朝日ノベルズ]【amazonbooplebk1
『山県有朋 愚直な権力者の生涯』[伊藤之雄/文春文庫]【amazonbooplebk1
『完全版・本朝奇談 天狗童子』[佐藤さとる/あかね書房] 【amazonbooplebk1
『ヒストリエ vol.5』[岩明均/講談社アフタヌーンKC]【amazonbooplebk1
『へうげもの 8服』[山田芳裕/講談社モーニングKC]【amazonbooplebk1

『雪蟷螂』[紅玉いづき/電撃文庫]

 長年争い続けた二つの部族、「雪蟷螂」フェルビエと「死人狂い」ミルデ。雪に閉ざされた厳冬の山脈で、彼らの間を吹き荒れた、過去と現在の恋物語。

 読了後にまず思ったのは、「これは題名通り、最初から最後まで「雪蟷螂」たちの物語だったなぁ」という一言でした。

 文章の流れや言葉の選び、そしてそれらの相乗効果で生み出される雰囲気はさすがに巧いと思いました。しかし、話そのものは個人の好みの問題もあるでしょうが、正直ぴんとこなかったかも。なんというか、心の動きが丁寧に描写されているようでわりとがががっと動いて「えええー。」と戸惑うことがあり。最後に登場人物たちが選んだ結論も「えええええー。」という感じで。あとそれから、もう一方の当事者であるはずのミルデ族側が置いてきぼりにされてないか?みたいな印象がぬぐい切れず……。
 そんなこんなでわりと引っかかるところが多く、さらについでに登場人物の誰かに入れ込むことなくどこか距離を置いた視点で最初から最後まで読んだため、綺麗な話だよなぁとは思いつつ、この素材ならもっといろいろとつっこめるはずなのにもったいないなぁ、という印象が残りました。……つーか、これ書いてる途中で物足りなかったところをあれこれ考えてて、要するに私はライトノベル版『黄金の王 白銀の王』を期待してたってことなのかなーとぼんやり思った。しかし、作品の指向性が全く違うんだから、それは無理だよね……。

 ともあれ、この作品で「人喰い」三部作完結とのことで。次作はどのような話が紡がれるのか、興味を感じるところです。

作品名 : 雪蟷螂
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 紅玉いづき
出版社 : 電撃文庫(メディアワークス)
ISBN  : 978-4-04-867523-9
発行日 : 2009/2/10