自己満足企画・「山風作品の感想を書こう!」、今月は室町ものから『室町少年倶楽部』を選んでみた。
室町幕府八代将軍・足利義政の幼年期から晩年までの半生を描いた表題作の他、籤引きによって将軍に選ばれた(←史実)室町幕府六代将軍・足利義教の最期に至るまでを描いた「室町の大予言」を収録。
「室町の大予言」は、その治世が「万人恐怖」とまで表現される義教の残虐性が第一の特徴かな。個々の行跡はむしろあっさりめに書かれているぐらいだと思うのですが、だからこそその理不尽さ・異常さが際立ってるというか。とりわけ六角牢の処置は、一度流しかけて「……待って今何かものすごく変じゃなかった?」と思って再度同じ部分を読み直し&作者の説明にうぎゃーとなった。あともう一つの特徴は、ある予言書の存在。ある家臣の家に伝わる書物に記された内容が、何を示しているのか。義教とその家臣の関係も含めて、次第に「ある史実」と奇妙な符合を見せるようになっていくその予言の行き着く先は……読んでからのお楽しみで。
「室町少年倶楽部」は全3章。第1章は、幼年期。まだ三春丸と呼ばれている義政とその兄貴分でこちらもまだ少年ながら管領となっている細川勝元、二人の子供らしい友情と冒険が、それこそ児童書のような語り口で紡がれていきます。……ここで終わっていれば、例えば小学生あたりに読ませても無問題の実に爽やかな内容なのですが、そうは問屋がおろさないのが現実のシビアなところというべきなのか。続く第2章になると、文体とともに雰囲気ががらりと変わり、描き出されるのは人に世の業の深さ。本質的なところは第1章のときと変わっていないはずなのに、それでも「何か」が決定的に変わってしまっていく登場人物たちの姿と混迷の度合いを深めていく世相の描写には、なんともいえない気分にさせられます。終幕直前に義政が「はじめて胸の痛みを覚えた」情景は、輝かしい未来を感じさせる幼年期の描写があったからこそ、だよな……。
人間関係の破綻はもはや取り返しがつかず、世の混迷の果ては見えず……この物語をいったいどうやってまとめ上げるのかと思っていたところで、ラストの一文。端的に事実を告げているだけにもかかわらず、凄まじいまでの切れ味で有無を言わさず物語の幕を下ろしてしまう一言には、何度読んでも背筋が震えます。
どちらの作品も、どこまでが創作でどこまでが史実なのか易々と悟らせず、実は本当にこんなことがあったんじゃないかと思わせる作者の技が冴えた名作。
作品名 : 室町少年倶楽部
著者名 : 山田風太郎
出版社 : 文春文庫(文藝春秋)
ISBN : 978-4-16-718315-8
発行日 : 1998/8
なんで1日だけ、しかもわざわざ造形芸術大で!(←単に、自宅とほぼ正反対の方向になるので、自分が行くの面倒というだけ)と呟きつつ、観にいってきました。
さすがに端折ってあるところも多かったけど、原作の雰囲気にに可能な限り近づけたという感じで、わりに楽しめました。そしてパンフレット見た段階では、「何かイメージ違うなぁ……」と思う配役が多かったけど、実際に動き始めると馴染んでくるというか。なんとなくそれぞれが「らしく」見えてくる不思議。
以下、印象に残ってる場面の簡単感想。
“『夜は短し歩けよ乙女』京都公演を観にいってきた。” の続きを読む