古都・甘味処巡り覚書(その十四)。

秋なので栗のお菓子を食べよう企画。京都で栗のお菓子といえばこれ!という人も多いだろう、「喜久屋」の栗の子(要予約)を買ってきました。
このお菓子も嘯月の生菓子等と同じく、鮮度が命。時間がたつにつれて、栗の風味よりも餡子の味が強くなっていくのです(お店でもらう注意書きにも「冷蔵庫へいれますと翌日迄日持致しますが風味は1/3になります」かいてあったりする)

「喜久屋」栗の子 栗の子・断面

一見ただのこし餡に見えるかもしれませんが、実はこし餡を使った栗餡です。その栗餡に細かくした栗を混ぜこみ、茶巾絞りにしてあります。

ここ2~3年ほど購入していなかったので、食べるのは随分久しぶり。そして、店主さんが代替わりされたと聞いていたので、記憶のそれと比べて味はどうなってるかなー、とちょっと不安に思ってました。実際に食べた感触でいえば、なんというか、作りが微妙に変わっているような気はするものの、しっとりなめらかな口あたりといい、口にしたとたんに広がる栗の風味といい、ちゃんと栗の子だなぁという感じでした(当たりまえだ) 栗のほっくりした素朴な味とこし餡の上品で控え目な甘さ。双方の絶妙なバランスが生み出す味を堪能しました。あとこのお菓子、一見餡子の固まりで重そうに見えるかもしれませんが、実際に食べると意外なほど軽かったりするんですよね。おかげで3つばかりを余裕でぺろりと平らげてしまったり……。

『天冥の標1 メニー・メニー・シープ(上・下)』[小川一水/ハヤカワ文庫JA]

 小川一水さんの新シリーズ。全10巻予定とのことで、かなりのボリュームになりそうです。

 物語の舞台となるのは、入植時のトラブルにより技術レベルが20世紀のそれと同程度となっている植民星メニー・メニー・シープ。西暦2803年、領主の圧政により多くの人々が困窮するこの星で、一つの転機が訪れようとしていた……というのが導入。

 序盤は、メニー・メニー・シープの情勢や、この地で生きる様々な種族――人類だけでなく、アンドロイドや先住種等の立ち位置等が、主要登場人物たちを追う中で語られていきます。登場人物たちはそれぞれの立場で対立したり協力したりする過程で友情と信頼、さらには愛情を育んでいき、すべての流れがやがて横暴を極める領主への反抗へ結びついていく。王道な展開ではあるものの、小さな流れが徐々に大きな流れとなっていく過程にはやはりわくわくしました。
 で。事前にどんな作品か情報をほとんど仕入れていなかったので、一つの星で繰り広げられる様々な種族の興亡史になるのかなー連作短編みたいな形で話が続いていくのかなーとのんきに考えながらページをめくっていたら。終盤の展開にひっくり返った。あれはもう、あとがきでの作者の言葉を借りて「ちょ、おいィ!?」としか言いようがないと思う。つーか、あの人とかあの人とかが、あんなことになるなんて!(指示語ばかりで訳が分かりません)

 先の見えない状況に思わせぶりにばらまかれた謎の数々。気になることはいくつもあって、これからどういう具合に話が転がっていくのかとても楽しみです。

作品名 : 天冥の標1 メニー・メニー・シープ(下)
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著者名 : 小川一水
出版社 : ハヤカワ文庫JA(早川書房)
ISBN  : 978-4-15-030969-5
発行日 : 2009/9/30

0909購入メモ(その2)。

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『新天地 創世の契約5』[花田一三六/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]【amazonbooplebk1
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『新天地 創世の契約5』[花田一三六/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

 龍族、鳥族、犬族、猫族、人族、そして混血たちの住まう大陸を舞台にした物語、1年4ヵ月ぶりの新刊にして最終巻。

 今巻の主軸になった内容ては、いよいよ大山脈に辿りついたベルネ=レスティ一行を迎えた龍族、その口から語られる彼らの目的と世界の真実。同時進行で展開されるのは、三族を相手にした「鋼の風」の籠城戦、というあたりでしょうか。なんと言いますか、これまでの巻で広げた風呂敷を粛々と畳んでいったという印象の強い巻でした。
 シリーズ通して一番の謎だったベルネ=レスティを招いた龍族の意図は、4巻読了の段階で想像したのが大方当たったかな。さすがに○○○○というのは思ってもいませんでしたが。あと、もっと意図的に行われてる実験なのかなーと思ったりもしてたので、そこは外れたなぁと。静かな緊迫感を孕んだ会話がどのような決着を見るのか、それは読んでからのお楽しみで。
 一方、「鋼の風」。これまでも不利な状況で戦ってきた「鋼の風」ではありましたが、最終巻だけあってやはり今回も厳しい戦いを強いられることに……。しかし、そんな状況でも諦めず、それぞれがそれぞれの仕事をきっちりとやりとげて、勝機を手繰り寄せる状況を整えていく過程が、派手ではなくてもなかなか熱い展開で、思わず手に汗握りました。

 人知れず大きな変化を迎えた世界。その先行きがどうなるかはわかりませんが、幸多からんことを願います。……まぁとりあえず、レスティとその仲間たちは願うまでもなく幸せに暮らせそうなので一安心です(笑)

作品名 : 新天地 創世の契約5
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著者名 : 花田一三六
出版社 : C☆NOVELS FANTASIA(中央公論新社)
ISBN  : 978-4-12-501087-8
発行日 : 2009/9/25