近未来の世界、テロの脅威に晒されている都市・ミリオポリスで戦い続ける少女たちの物語。治安維持部隊MPB遊撃小隊が主役の「オイレンシュピーゲル」、公安局要撃小隊MSSが主役の「スプライトシュピーゲル」が合流しての完結編、とのこと。
読み終わった直後の素直な感想は「続きはどこだーっ!」でした。いや、今までは曲がりなりにも1冊で一つの事件に決着がついていたので、ここまで強烈なヒキがくるとは思っていなかったというか。えーと、内容としてはスプライト組との接触は増加しているものの、視点はオイレン側で統一されていたこともあって、実質的にオイレンシュピーゲル5という印象の巻でした。とても簡単なあらすじは、これまでに起きたそれぞれの事件が複雑に絡まりあったある大きな事件が動き出し、少女たちも目前の敵だけでなく自身の過去と対峙することを余儀なくされる、いうところでしょうか。
プロローグから「ちょっ!?」となり、これでもかというぐらいに容赦なく襲いかかる過酷な現実や失われた過去に幾度も打ちのめされ、しかし、そのたびに立ち上がって戦い続ける面々にうわーっとなり……なんかもう、圧倒されました。しかも、これでもまだおそらくクライマックスに至っていないと推測されるとかなんだそれ。オイレン4巻のあとがきによれば、テスタメントでは「成長と卒業」が扱われていることになるのでしょうが……凄まじすぎる卒業試験です。そして、少年少女が頑張っている裏側では、大人たちも因縁に決着をつけるべく動き出しているのですが、これがまた格好良い。大人には大人の戦い方があるということか。
あと、これまでも肝心なところでは男前なところを見せてくれていた吹雪君は今回の件でさらに株が上昇。つーか、男前すぎませんか彼。最前線で戦う力こそないものの、大好きな女の子を守るために自分のできることは全てやり尽くしたうえ、終盤のあのメッセージ……反則すぎてもうどうしようかと思いました……(涙) 吹雪だけではなく、皆がそれぞれに死亡フラグが成立しまくっているという強烈な状態に置かれているものの、それでも最後にどん底から立ち上がった涼月の姿に、確かな希望を見た。今はもう、「皆頑張れ。死に物狂いで生き残って幸せになってくれ!」と祈るような気持ちです。
これから本格的に行動開始、というところで幕になっているので一刻も早く続きが読みたいところですが、次は同じころにスプライト側ではどんなことが起こっていたのか、という話になりそうかな。そうじゃないと謎なことが多すぎるし……まぁとにかく、今は大人しく続きを待つだけです。
京都西山紅葉巡り(その2)。
先週の西山紅葉巡りのときに、ルートの都合で行きそびれた粟生光明寺(以下「光明寺」)に行ってきました。例によって撮ってきた写真はHatenaFotolifeにもUPしています。
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0911購入メモ(その1)。
「その1」と言いつつ、更新サボってたツケでほとんど今月購入した本の一括リストになった。
馬鹿みたいに長くなったのでたたみます。ついでに個別リンクの作成は省略(途中で面倒になったらしい)
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京都西山紅葉巡り。
自宅から比較的近い&京都市内に比べれば混雑もマシだろうというわけで、運動不足解消を兼ねて、行ってきました。自転車で。
……うん、まぁ、あとで冷静になって考えると、別に自転車走り慣れてるわけでもないのに無謀だったと自分でも思う。
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『クシエルの矢(全3巻)』[ジャクリーン・ケアリー/ハヤカワ文庫FT]
ミストボーンに続いて、おむらさんの感想に釣られて購入。読後の素直な感想は、「流血女神伝」に性的あれこれを増量してよりハードにより耽美にしたような話だなぁ、でした。
天使たちの末裔の国、テールダンジュ。愛の営みは神への捧げ物であると捉えられているこの世界で、主人公のフェードルは「クシエルの矢」と呼ばれる印を持って生まれた「アングィセット」で、その資質を見出されたがために数奇な人生を歩むことになる――というのがとても大雑把な説明になるでしょうか。ちなみに「アングィセット」というのが、苦痛に快楽を見出す被虐嗜好……まぁ、とても身も蓋もなく言えば真性のドM体質なわけで。加えて説明しておくとクシエルは懲罰を司る天使で、こちらの血筋の人は一言でいうとS体質。
1巻では、その性質を使えると見た貴族デローネイに引き取られたフェードルが、神娼(ようするに高級娼婦)となるのに必要な技だけでなく様々な知識や技術を教え込まれ、彼の間諜として美しく賢く成長していく過程と同時に繰り広げられる宮中陰謀劇が、2巻ではある裏切りから、護衛の騎士ジョスランとともに敵国スカルディアへ奴隷として売り飛ばされたフェードルの生き残りをかけたサバイバルが、そして3巻ではスカルディアとの間についに起こった戦争と、その影で不利な戦況を覆すためにフェードルが仲間とともに奮闘する様子が描かれます。あ、一応書いておくと、性的な描写は設定が設定なのでそれなりにありますが、あんまり厭らしい感じの描き方じゃないので、わりとサクッと読めると思います。
読み始めこそフェードルの特殊性癖が(良くも悪くも)目を引いてしまいますが、次第に登場人物たちの関係や宮廷内の権力を巡る政争、国家間の謀略などなど、たっぷり詰め込んだ物語そのものの面白さに惹きつけられました。ただ、個人的な好みを言えば、一人称&回想文形式であるがゆえに、あまり深く突っ込まずに流してる部分をもう少し書きこんでくれればもっと好みだったのになぁとも思いましたが。
登場人物の話。とりあえず、なにはなくとも主人公のフェードル。ドMという設定こそアレですが、基本的に自分を見出し養育してくれたデローネイに恩義と敬意と忠誠を持ち、また神娼としてテールダンジュ人としての誇りも忘れない、実に良い娘だと思います。M設定も1巻の段階では今ひとつ生きてなかった気がするけど、2巻からは業の面も描かれたためか、まぁそういうものかと納得しますし(しかし、3巻のアレとかは、読んでるこっちが「痛い痛い止めて止めてー!」と言いたくなった。) それから、フェードルの護衛となるジョスラン。初登場時は自身の信仰に忠実なガチガチの堅物でフェードルとも反目していた彼ですが、やむをえない事情から「破戒」するに至って徐々に人間味のあるキャラになっていったなーと思います。その他にも、フェードルの幼馴染で彼女とはまた違った過酷な運命にある「流浪の民の王子」ヒアシンス、フェードルの養い親で間諜としての教育を怠らない一方惜しみない愛情を注ぐデローネイ、デローネイの一人目の仕込みっ子であるアルクィンなどなど、あるいはフェードルの助けとなり、あるいは敵となる多様な脇役陣も実に魅力的。……しかし、どんなに魅力的な登場人物でも物語の進行状況によってはさっくり切り捨てる作者氏の姿勢には須賀さんがダブって見えましたさ……orz
さて、テールダンジュを襲った危機はひとまず乗り切ったことになりますが、まだまだ波乱要素は数多く。フェードルをゲームの相手を認めたらしいあの人の動向も含めて、第二部ではどんな展開が待っているのか。翻訳がとても楽しみです。