『煌夜祭』、「〈本の姫〉は謳う」に続く、多崎さんの2年ぶりの新作。話を要約すれば、「サマーア」という名の神を崇めるとある国の変革の物語、となるでしょうか。
いやー、今回も素敵な物語でした。6部構成で語られる事象は一つのもので、それ自体はストレートな印象なのですが、それに関わった6人の視点から語られることで物語が厚みを帯びていく結果に。おかげで読みながら、「おお、ここではこんなことが」とか「ああ、このときこの人はこんな気持ちだったのか……」と楽しむことができました。……まぁ、どうしても同じような場面を繰り返し読むことになってしまうので、冗長に感じることもありましたが。
ちなみに私が好きなのは、「紅輝晶」と「闇輝晶」。特に、「闇輝晶」はこれまでのお話で語られなかった部分が多かったり、立ち位置的にこれまであまり表に出てこなかった人物の視点ということも手伝って、興味深くもありました。それを差し引いても、この人の生き様――自分の抱いた夢・理想・目標を成し遂げるべく、最期の最期まで己の信じた道を真っ直ぐに進んでいく姿は、切なくも格好良かった。ラスト、彼の最後に手向けられた言葉と締めくくりの言葉が、じわっとくる。あとは、幕間のイラストも巧いなぁ、とか、タイトルの意味……!とか。
あとがきによれば、次回作は漢字を使ったファンタジーということで。気長に発売を楽しみに待ちたいと思います。
ぼちぼちと。
蔵書の電子化(いわゆる自炊)を進めています。
定期的に処分はしていてもなんだかんだで手元に置いておきたい本は増える一方になってたので、本を裁断するという葛藤を乗り越えて挑戦しはじめたのですが……いやこれけっこういいですわ。文明の利器万歳。データはPCとDVDに落として保管していますが、もうひとつ保険で外付けHDD買ってもいいかなぁ、と思ってみたり。
ターゲットになってる本は、ほとんど読み返しもしないけどわりと好きだからなんとなく手放したくはない、という本。そこまで手間をかけたくない本はドナドナ箱へ流してます。
この調子で部屋のざくざく整理を進めたいところ。
『Fate/Zero(5)闇の胎動』[虚淵玄/星海社文庫]
「Fate/Zero」商業版第5巻。今回収録部分では脱落者はそう多くありませんが、じわりじわりと舞台は整えられ、物語は終焉に近づきつつあります。
とりあえず、言峰がいよいよその本性を自覚しはじめたりアーチャーと共闘関係成立させてたりと、SNを知ってる側からすれば落ち着くところに落ち着きだしてるなーと思った。最後の「三文劇」(byアーチャー)とか実に言峰らしいし。しかし、正直この時点ではまだ言峰よりも間桐の方がやってることは救いがたいとも思う。じーさん、少ない出番でやることは実にえげつないもんな……時臣の判断は魔術師としては間違ってないのだろうけれど、それでも、養子に出す先を間桐にしたのはどう考えても失敗だろうと思うんだ……。
で、そんなこんなでシリアスなメイン組とある意味で対照的なのがライダー組。1巻から比べて格段に成長しているウェイバーと、正々堂々我が道を往くライダーのコンビは、重苦しくなっていく物語の中で数少ない憩いですよ。まぁ、そんな彼らの戦いも間もなく決着を迎えるわけですが。あれはもう何度も読んだ場面ではありますが、それでも大好き!と思える場面なので、やっぱり楽しみです。そういえば、切嗣がウェイバーの行動を深読みしすぎて読み間違いまくってるのには地味に受けますね。
そのほか、時臣と凛の別れの場面でSNプロローグが頭をよぎったり、アイリと舞弥のやりとりにそれ死亡フラグ……!と思いつつしんみりしたり、今回唯一華々しいセイバーvsライダー戦に手に汗握ったりした。あ、あと、いまだ孵らぬ卵の中で夢を見ている○○○の描写がとてもじんわりくる。hollowの情報が頭にあるだけに、どうしても、ねぇ……
さて、残すところあと1冊。せっかくだから、最後はあのイラストがくると良いなぁ、と思いつつ。
2011年6月の購入予定。
毎月恒例購入ほぼ確定組の自分用備忘録です。
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『レッド・アドミラル 新艦長は嵐を誘う』[栗原ちひろ/角川ビーンズ文庫]
偶然の出会いからわけありの軍艦に配属されることになった軍人・ロディア(男装の麗人)とその仲間たちが活躍する海軍出世物語、新章開始の第4巻。
感想。ロディアさんがヒーローすぎる。最初こそ艦長となった重圧にやられていましたが、吹っ切れてからはもう……「黙って私についてこい」発言を筆頭に、相変わらずどこまでも男前な主人公(女性)でした。そんな彼女と本命お相手のランセとのやりとりはも実にニヤニヤしましたが、それ以上に転がったのがアルデアとの場面。アルデアにも良い人を見つけて、幸せになってほしいものです。あと、レーン号の面々が美味しいのはいつものことですが、今回は国王陛下が思いのほか良いキャラだったことが判明。そうかこの人はこういう人だったのか……。
物語的なことで言えば、ランセが海賊に!?な事件の真相や最後のあの人の裏切りは、結構予想通りだったかな、と。しかし、あの人の勘違い(というか思いこみというか)は本人の性格以外に、「他の要素」も関係していたりするのかなぁ。
ともあれ、とんでもない場面で話が続いているので、次の巻が楽しみです。