去年最大のネタゲーだったあのゲームの続編、『戦国BASARA2』がいよいよ発売ですよ! ……いや、正式発売日は明日ですが、本日フラゲできたので。OPは前回に比べると大人しめですが(←あれで大人しいと思う辺り、かなり毒されてる)、中身の方は今度もかなり馬鹿やってると信じてるので、かなり楽しみ。さぁ、遊ぶぞー。
『お楽しみはこれからだ! Jazzy Murder』[真瀬もと/ハヤカワ・ミステリワールド]
ハヤカワ・ミステリーワールドから発売の、真瀬もとさんのハードカバー第2弾。個人的に真瀬さんの作品は合う合わないの差が大きいのでどうかなぁと思いつつ、とりあえず購入。
物語の舞台は禁酒法時代、トーキー映画が世に出始めた頃のアメリカ。叔父を介して持ち込まれた依頼――勤め先の主人が育てている子犬を人気女優に届けるために英国から渡米したメイドのケイト。しかし、当の女優が殺害され、おまけに彼女自身も容疑者に。叔父の助けでとりあえず疑いは晴れたものの、様々な事情から犯人探しをすることに、という展開。
今回の話はなかなか面白かったです。「蔦のよう」と作中で評された女優の、作中で徐々に暴かれていく狂気。それがどのような形で登場人物たちに影響を与え、事件を引き起こしたのか。正直、ミステリとしてはそれほど凝ったトリックがあるわけでもなし、悪くはないけど普通、という印象ではありますが。主役をはじめとする登場人物たちが割とキャラが立っていて良い感じで、それだけに、それぞれの身勝手な思いの結晶ともいえる事件の展開とその真相にはなんとも言いようのない気分にさせられました。……しかし事件の真相よりも読んでてうわーと思ったのは女優が執着し続けたある人物の最後の言葉。彼女にとっては本当に女優はそういう存在だったのだろうけど、それにしてもあの一刀両断っぷりは容赦がない。
一方、事件と平行して語られていたのは、ケイトと叔父の「元警部」ことエドの関係。叔母の事故死後、職を辞し、娘のアリスをケイトの家族に預けて行方知れずになっていた元警部。「人間の顔に興味がある」と言い、写真家として生計を立てているこの叔父を何とか英国に連れ戻そう、せめて娘に一目だけでも会って欲しいと説得するケイト。その結果がどうなるかは、まぁお楽しみということで。とりあえず、最後のエドの告白を受けてのケイトの意思には「この娘、やっぱり良い娘だなー」と思いました。
2005年ライトノベル新人作品評価調査。
浅木原書店様実施の調査、結果発表。新シリーズ・単発作品調査2006年5月期の結果も公開中(コメント欄は再構成中とのことですが) 毎度お疲れ様です。しかし、こうして列挙されてみると、意外と去年は新人作品読んでなかったなぁ。
文庫版の。
『黎明に叛くもの』、ざっと見た感じ新書に収録されている外伝が文庫版で収録されていない……。私は新書版持ってるからまだいいけど、ハードカバー版のみ既読の人は今回もあの外伝4編を読めないわけで。後日外伝だけを纏めた文庫を発売するというなら分かるけど、そうじゃないならかなり酷いぞ中央公論新社。
『安徳天皇漂海記』[宇月原晴明/中央公論新社]
山本周五郎賞受賞はまだ理解できるとして、直木賞候補に挙がるという以前からのファンでもちょっと信じられないことになっていた宇月原氏の作品。「ちゃんとした感想はまたそのうちー」とか思ってる間に時間が過ぎそのままになっていたのですが(つーか、もういっそ文庫化まで待とうかとも思ったり)、せっかくの機会なので本棚から引っ張り出してきました。
作中でキーパーソンとなっているのは、タイトルにもなっているとおり、壇ノ浦で入水したとされる安徳帝。第一部「東海漂泊」では、安徳帝は諸々の経緯を経て、鎌倉幕府において源氏最後の将軍となる源実朝のもとに辿りつきます。……本来なら巡りあうはずのない両者が何故巡りあえたのか。実はこの作品での安徳帝は、神器の一つによって琥珀状の玉に封じられ、眠りについているという設定で、現世には直接的な干渉はできないものの夢を介して他者に意思を伝えてきたりするのです。かくして、不思議な交流により安徳帝の荒ぶる心の内を知った実朝は、彼の幼帝を鎮めるため如何なる行動をとったのか。実朝の近習であった老隠者の口から語られる一連の物語は、実朝の人となりを反映して柔らかな慈しみを感じさせると同時に、尽き行く命運になんともいえぬ物悲しさをも漂わせるものでありました。
そして第2部「南海流離」。語り部(というか話を動かしていく)役を担うのは、大元帝国に君臨する大ハーン・クビライの目にして耳となる巡遣使マルコ・ポーロ。ジパングの奇譚を追う中で期せずして南宋の滅亡にも立ちあい、さらに幻想に引きずられるように南海のある小島まで辿りついた彼が、目にしたものとは。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、終盤の小島での展開やその「正体」(?)には唖然呆然といたしました。他に印象に残っているのは、もう一人の少年皇帝、南宋の衛王の存在。第2部は終盤のあれもあってか個人的に「解放と昇華」のイメージが強く、さらに第1部と比べると文体と同時に雰囲気までがらりと……というほどではないけれど、切々と胸を打つ雰囲気が影を潜めていたのですが、衛王の最期に至るまでの行動はやはりやるせなく、哀れに感じられました。そして、それぞれにあてどなく彷徨う彼らとは異なり、しっかりと根を下ろしているクビライ。出番はそれほど多くはありませんでしたが、彼とマルコの会話は二人の気の置けない関係やらその他諸々が伝わってきて良かったです。特に幻想に魅入られつつあったマルコをこちらに引き留めるために紡がれた言葉がお気に入り。……つーか、そのうちにでもモンゴルもしくはマルコが主役の幻想譚書いてくれないだろうか宇月原さん。黎明3巻の外伝といい、結構好きっぽいのですが。
宇月原氏のこれまでの作品と比べると伝奇色は薄めでしたが、その分幻想小説としての魅力が増し、非常に耽美かつ端正な作品に仕上がっていました。読了後は満足の一言。好き嫌いは……まぁ、やっぱり分かれるかと思いますが、興味のある方は是非一読をオススメします。