『ピルグリム・イェーガー 6』[冲方丁(原作)・伊藤真美/YKコミックス]

ルネサンス期のイタリアを舞台にした異能者たちの物語、6巻目。

大罪者によって砕かれる銀貨。それが誰になるかは、1巻冒頭の段階でおおよその見当はついていたわけですが……どんな目にあっても無垢なまま進む愚者。そんな相棒への苛立ちや嫉妬を感じる描写はこれまでも描かれてきましたが、遂に決定的な決別が。ここに至るまでの心の変遷、「どちらかが先に死んでいれば……」という言葉、そして何より愚者の炎が彼女を焼いたという事実がひたすらに哀しい。

さて、この巻で第1部完結となったわけですが……このまま第2部が永遠に始まらないなんてことにならないことを祈りつつ。

作品名 : ピルグリム・イェーガー 6 【bk1】
著者名 : 冲方丁(原作)・伊藤真美
出版社 : 少年画報社(YKコミックス)
ISBN : 4-7859-2718-6
発行年月 : 2006.11

『銃姫8 ~No Other Way to Live~』[高殿円/MF文庫J]

 「銃姫」8巻目。あとがきではあと1巻で完結する予定みたいなことが書いてありましたが、それは多分無理だと思う。

 今巻は、主役周りよりもチャンドラースとジュディットの戦いが印象的。かつては恋人同士でったものの、今は刃を交える仲となった2人。互いのことを知り尽くした二人が指揮する戦闘は、予想以上に迫力があり面白かった。そして、「何故惹かれあったのか」という言葉が切ないですね……。
 一方、セドリックも遂にエルの正体やお屋敷の惨劇の真相を知ることに。セドリックがエルを拒絶しなかったのにはほっとしましたが、彼女に掛けた言葉は届かず……。彼女との再会がどのような形になるのか、楽しみなような怖いような。あと、最後になってアンにもピンチが。こちらの動向も気になります。

 そして、今回もとんでもないところで以下続刊。この状況で、次巻はどんな展開が待っているのか、楽しみです。……独り言を言えば、そろそろシリーズ当初の目的にも動きが見えて欲しいところですが、これはどうなることやら。

作品名 : 銃姫8 ~No Other Way to Live~
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 高殿円
出版社 : MF文庫J(メディアファクトリー)
ISBN  : 978-4-8401-1743-2
発行日 : 2006/11

え、ドラマ化?

『拝み屋横丁顛末記』が、12月2日からテレビ朝日の深夜枠でドラマ化されるそうで(全4話)
原作のイメージを損なわないような出来だといいですねぇ。
……ところで、関西圏では放送されるんだろうか。

そういえば、乙一氏の『失踪HOLIDAY』コミック版の帯にドラマ化の文字が。
ちょっと調べてみたら、これもテレビ朝日深夜枠らしい……。
ど、どうか関西人にも救いの手を。

コミック三国志マガジンvol.12。

懲りずに今回も購入。そして懲りずに簡単感想。

【火鳳燎原(陳某)】
今回はさすがに飛ばさず、増ページで一気に5巻最後まで掲載。内容的には、燎原火VS呂布をメインに、残兵の意地と底力発揮というところでしょうか。次号は飛ばされなければ曹操軍や「水鏡二奇」(「我が子房」の人)がお目見えするんですが、どうなることやら。……どうでもいいけど、今回は久しぶりに訳が微妙だった気がする。

【呂布が起つ!(島崎譲)】
最終回。あれ、今まであんまり好きじゃなかったのに何故か面白く感じたんですが。呂布軍の最後のグダグダをあえて無視して、この作品の呂布のキャラのまま最期まで突っ走ってくれたのが良かったんでしょうかねぇ。

【兄弟詠―曹丕と曹植―(加倉井ミサイル)】
この兄弟を扱ってるにしてはある意味珍しい設定・雰囲気の話。ただ、もう少し心理描写など掘り下げて欲しかった。あと、絵をもう少し丁寧に書いてくれればいいんですが。いや、わざとこういうふうに描いてるのかもしれませんが、ぱっと見が雑に感じるんですよ。

【ハイバチュン(倭日向)】
いやこれ三国志じゃないだろというツッコミは禁止でしょうか。しかし、うっすらと関係あると言えなくないしたまにはこういうのもいいかなーとも思ったり。内容は、まぁ普通に読めると言う感じ。

【欺瞞の儒雅(中島三千恒)】
列女として名を残す趙昂の妻・王異の話。正直絵は苦手なんですが、話はなかなか良かった。ラストのコマで描かれた、実際にはありえなかった情景が、なんとも哀しい。

今回はまぁまぁな作品が揃っていた印象。次号は佐々木氏と志水氏の作品が掲載されるようだし、素直に楽しみ。

『僕僕先生』[仁木英之/新潮社]

唐代、玄宗皇帝の御世。官吏として財を成した父に寄りかかり、安逸を貪っていた青年・王弁は、ひょんなことから地元の里山に住む仙人・僕僕(見た目は可憐な少女)に弟子入りし、さらには彼女と共に旅に出ることに。

 第18回日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作。この賞は基本的にチェックすることにしてるので、今回も購入。

 感想。設定からはもっと破天荒な話を想像していたので、意外な地味さに逆に吃驚しました。つーか、改めて思い返すと皇帝にお目通りしたり(ネタバレにつき自粛)に飲み込まれたりそれなりに大変な目にもあってるはずなのに、話そのものはあまり印象に残ってないぐらいなのですが。なんというか、皮肉屋の僕僕と「ニート青年」王弁の掛け合いがなんだかんだで面白く、上手い具合にそのキャラに乗せられるまま一息で読んでしまったという感じですね。
 良くも悪くも、中華モノのわりに堅苦しさがなく、気楽に楽しめる読み易い話ではありました。が、昨年の「ゴメス」もそうでしたが過去のファンノベ大賞受賞作と比べると今一歩及ばないというか。随分普通な作品が受賞したなぁと思ってしまいます。それはそれで悪くない(というか、売上を考えると新潮社的にはそちらの方がいいのでしょうけど)と思いますが、後宮やら信長やら沖縄やら、ああいう変な作品もまた出てきて欲しいなぁ(しみじみ)

 まぁ、普通に楽しめたので次回作に期待……って、12月には学研で受賞した作品が発売されるようで。まぁ、とりあえず買ってみようと思います。

作品名 : 僕僕先生
    【 amazon
著者名 : 仁木英之
出版社 : 新潮社
ISBN  : 978-4-10-303051-5 → 978-4-10-137431-4
発行日 : 2006/11/21 → 2009/3/28(文庫化)