『ヴァーテックテイルズ 麗しのシャーロットに捧ぐ』[尾関修一/富士見ミステリー文庫]

 富士ミスの新人さんの作品。ある屋敷を舞台に引き起こされた惨劇を描いた物語、というところですか。

 ところどころで「えええ、それはありですか?」と呟きたくなるような設定やらもありましたが、個人的には「……まぁ、富士ミスだしね」の一言で流せる範囲だったし(←ある意味物凄く失礼な発言) 他、登場人物の名前や時系列が演出の都合上分かりにくくしてあるのが難といえば難ですが、それなりに雰囲気はあるし最後まで普通に楽しめました。……あんまりミステリじゃありませんが、これも一応広義の「館モノ」ということになるんでしょうかねぇ? 以下、ネタバレ気味なのでちょっとコメントアウト。

 ところで、編集の解説読んで真剣に疑問に思ったのですが、この話そんなに怖がるほどのところってありました……?(←何故かホラー系にはやたらと耐性があるヤツ)

作品名 : ヴァーテックテイルズ 麗しのシャーロットに捧ぐ
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著者名 : 尾関修一
出版社 : 富士見ミステリー文庫(富士見書房)
ISBN  : 978-4-8291-6382-5
発行日 : 2007/1

『シャギードッグ 天使の序章』[七尾あきら/GA文庫]

 随分久しぶりのような気がする七尾あきらさんの新作は、近未来の日本を舞台にした格闘SFアクション。

 感想としては、いろいろ詰めこみすぎ&微妙に説明不足な気がしなくもないけど、普通に面白いというところでしょうか。前半は主役のオズと大介、二人の抱える事情を匂わせたり設定周りの説明に筆が多く割かれていたためか、アクションモノと聞いて予想していたより随分大人しめな話だなぁと思ったりしましたが。後半に二人をそれぞれ狙う敵との戦いが始まってから終幕まではあれよあれよと話が転がっていき、最終的にはなかなか疾走感のある楽しい作品だったという印象が残りました。

 謎もいくつか残されていることだし、続編の構想はあると思っていいのでしょうか。まぁ、気長に待つことにいたします。

作品名 : シャギードッグ 天使の序章
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著者名 : 七尾あきら
出版社 : GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN  : 978-4-7973-3613-9
発行日 : 2007/1/12

『SHINOBI』観ました。

怒り狂うことになるのが目に見えていたので結局映画館に足は運びませんでしたが、TV放送されるということでそれならまぁ観てみようかなぁ、と。

結果。アニメの『バジリスク』がどれだけ高レベルで映像化してくれたのかを思い知った気分ですorz
つーか、改変されてる部分がいろいろとありえなさすぎて、なんだかもう笑うしかないですよあはははは。
…………とっとと記憶から抹消して、『バジリスク』のビデオ観よう。嗚呼、そろそろDVDも買い揃えたいなぁ(現実逃避中)

2月の新刊購入予定。

以下、現在までに各公式・情報サイトを巡回した結果のほぼ購入確定分メモ。

・HJ文庫
『月の娘 2』:渡辺まさき

・角川スニーカー文庫
『オイレンシュピーゲル 壱 Black & Red & White』:冲方丁

・角川ビーンズ文庫
『アラバーナの海賊たち 幕開けは嵐とともに』:伊藤たつき
『少年は、二度太陽を殺す 若き宰相の帝国』:和泉朱希

・集英社コバルト文庫
『流血女神伝 喪の女王5』:須賀しのぶ
『風の王国 花陰の鳥』:毛利志生子
『ダナーク魔法村はしあわせ日和 ひみつの魔女集会』:響野夏菜

・講談社X文庫ホワイトハート
『始まりのエデン -新たなる神話へ-』:榎田尤利
『猛れ、吹き荒ぶ沖つ風 幻獣降臨譚』:本宮ことは

・電撃文庫
『世界の中心、針山さん 2』:成田良悟
『ミミズクと夜の王』:紅玉イヅキ

・新書館ウィングス文庫
『海馬が耳から駆けてゆく 4』:菅野彰

・B’s-LOG文庫
『桜の國の物語 ~ひのこだま~』:カガミコ
『お狐サマの言うとおりッ!』:かたやま和華

・GA文庫
『戦塵外史 二 八の弓、死鳥の矢』:花田一三六

・富士見ファンタジア文庫
『スプライトシュピーゲル I Butterfly & Dragonfly & Honeybee』:冲方丁

・MF文庫J
『パラケルススの娘 5』:五代ゆう

・その他
『水滸伝 5』[北方謙三/集英社文庫]
『水に描かれた館』[佐々木丸美/創元推理文庫]
『砂の城の殺人』[谷原秋桜子/創元推理文庫]
『沈黙のフライバイ』[野尻抱介/ハヤカワ文庫JA]
『泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部』[酒見賢一/文藝春秋]
『花嫁人形』[佐々木丸美/ブッキング]

とりあえず、他の何を我慢してでも『泣き虫弱虫~』だけは買う。絶対買う。
あと、コミックでは『Y十M』と『怪・力・乱・神クワン』の新刊が出るから、忘れないように買わなくちゃなー。

『精霊の守り人』[上橋菜穂子/偕成社ポッシュ軽装版]

「短槍使い」の異名で名が知られている女用心棒のバルサは、新ヨゴ国の第二皇子チャグムが河に落ちたところに偶然居合わせ命を救ったことから、彼が背負わされた奇妙な運命に深く関わることになる。100年に1度卵を産むという精霊・ニュンガ・ロ・イム〈水の守り手〉の卵を産みつけられニュンガ・ロ・チャガ〈精霊の守り人〉となったチャグムを、父である帝はその威信を守るため直属の密偵である〈狩人〉に命じて捕らえようとする。さらに、ニュンガ・ロ・イムの卵を喰らおうと人間たちの暮らすこの世(サグ)と重なり合って存在する世界(ナユグ)の生き物、ラルンガ〈卵食い〉も動き出すのだった。

 新刊が少ない時は既刊の感想を書こう企画・第2弾。現在最終章(全3巻予定)刊行中、4月からのアニメ化も決まったことで一般知名度も上がるだろう児童文学の傑作ファンタジー、「守り人」シリーズ第1巻。ちなみにアニメ化に合わせてか昨年末に軽装版が発売。漢字の比率が増えて大人も読みやすくなりました(……でも、『狐笛』文庫化がありならこれも文庫化して欲しかったなーともちょっと思った)

 「今年30」と児童文学にしては珍しく高年齢に設定されているバルサは、描写の端々から確かにそれだけの年月を重ねてきたと納得させられる腕前と落ち着きを備えた女性。彼女という主人公そのものが、物語にしっかりとした存在感を与えてくれている印象。一方、もう一人の主人公といえるチャグムは、バルサとはまた違った若さゆえの柔軟性が魅力。優しくも厳しいバルサや、バルサの幼馴染で呪術者のタンダ、タンダの師匠でもある賢者トロガイと共に過ごす中、彼が精神的に大きく成長していく姿は、王道ながらもやはり良いと感じます。その他お気に入りなのは、脇役のはずなのに妙な存在感があるというか、新ヨゴ国側最大の功労者といっても異論は出ないだろう星読博士のシュガ。原住民ヤクーの知恵すら修めようとする熱意には素直に感心します。

 登場人物の魅力もさることながら、話そのものも面白いです。チャグムを追っ手から守る中、タンダやトロガイの知識、そして原住民ヤクーの伝承によって次第に明らかになっていくニュンガ・ロ・イム〈水の守り手〉の役割。都でシュガが読み解く過去の記録から明らかになる、新ヨゴ国建国の祖であるトルガル帝の水妖退治伝説の中で歪められた箇所。何気ない歌や習慣に隠された重要な手がかりなど、様々な要素が次第に一つの流れを作っていく展開は先が気になって飽きないし、バルサと〈狩人〉との殺陣や、終盤のラルンガ〈卵食い〉との死闘も迫力・躍動感があって読み応えがあります。

 ニュンガ・ロ・チャガ〈精霊の守り人〉としての役割が終わり、バルサとチャグムに訪れた別れの時。チャグムは何も知らずにいた頃とは違う視野を持って王宮に戻り、自らの過去を見つめなおすことを決めたバルサは長く離れていた故郷へ足を向ける。この先二人の前にはどのような運命が待ち構えているのか、それはまた別の物語で語られます。

作品名 : 精霊の守り人
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著者名 : 上橋菜穂子
出版社 : 軽装版偕成社ポッシュ(偕成社)
ISBN  : 978-4-03-750020-7
発行日 : 2006/10/31