5月4週目の購入メモ。

『村田エフェンディ滞土録』[梨木香歩/角川文庫]【boopleamazon
『沙漠の国の物語 ~楽園の種子~』[倉吹ともえ/小学館ルルル文庫]【boopleamazon
『天は赤い河のほとり 外伝 ~魔が時代の黎明~』[篠原千絵/小学館ルルル文庫]【boopleamazon
『封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ1』[霜島ケイ/小学館ルルル文庫]【boopleamazon
『プリンセスハーツ ~麗しの仮面夫婦の巻~』[高殿円/小学館ルルル文庫]【boopleamazon
『パイレーティカ 女海賊アートの冒険 上巻』[タニス・リー/小学館ルルル文庫]【boopleamazon
『黄金の剣は夢を見る』[西谷史/小学館ルルル文庫]【boopleamazon
『舞姫恋風伝』[深山くのえ/小学館ルルル文庫]【boopleamazon
『廃帝綺譚』[宇月原晴明/中央公論新社]【boopleamazon
『龍族 創世の契約1』[花田一三六/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]【boopleamazon
『剣闘士スパルタクス』[佐藤賢一/中公文庫]【boopleamazon
『氷と炎の歌2 王狼たちの戦旗3』[ジョージ・R・R・マーティン/ハヤカワ文庫SF]【boopleamazon

ルルル文庫ご祝儀代わりに大量購入。しかし、天河は本編前の話か。ザナンザが見られるのは嬉しいけれど、ユーリの登場がなさそうなのは残念かも。

『ファルティマの夜想曲 恋するカレン』[葉山透/B’s-LOG文庫]

 公式のあらすじ読んで気になったので、購入してみた1冊。ファルティマという名の港町を舞台にした、娼婦のカレンと彼女を取り巻く3人の男性たちの物語(Not逆ハー)

 ヒロインの設定が少女系レーベルにしては珍しい気がしますが、それ以外は良くも悪くも割と王道な恋物語だったかなーという印象。あと、大きな事件というほどの出来事もないので、やや盛り上がりに欠ける感もあるかも。
 それでも、カレンの揺れる心情などはなかなか良かったし、描写や雰囲気作りが上手いのか何気ないシーンが意外なほど印象に残ったりするのが面白かった。エピローグのまとめ方も含めて、地味だけど素敵な物語だったと素直に思えます。

 あとがきを読む限り次回作の構想もあるようで、次はどんな話が読めるのかちょっと楽しみ。

作品名 : ファルティマの夜想曲 恋するカレン
    【 amazon
著者名 : 葉山透
出版社 : ビーズログ文庫(エンターブレイン)
ISBN  : 978-4757735576
発行日 : 2007/5

『黄昏色の詠使いII 奏でる少女の道行きは』[細音啓/富士見ファンタジア文庫]

 「名詠式」と呼ばれる召喚術が発展した世界で出会った、少年少女の物語。一月に発売された新人さんの作品の続編。

 1巻で綺麗に完結してたので、あれから上手く続けられるのかなーと思ったりしてましたが、余計な心配でした。1巻同様、真っ直ぐで綺麗な物語でした。……まぁ、真っ直ぐ綺麗すぎてそれなりにスレた大人としては苦笑するしかないようなところもありましたがそこはそれ。人間、たまには心の洗濯も必要です。
 内容としては一言で言って今後への伏線張りもしくは風呂敷広げ編という感じでしたが、今回の事件や友人とのやり取りを通して自分の進む道を見定める少女たちの姿が清々しかったですね。……それにしても、この学校の危機管理意識はどうなんだとちょっと思わなくもなかった。

 さて。様々な謎も気になりますが、何より「新しい約束」というのがどのようなものになるのか。既に決定しているらしい3巻の発売が楽しみなところです。

作品名 : 黄昏色の詠使いII 奏でる少女の道行きは
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 細音啓
出版社 : 富士見ファンタジア文庫(富士見書房)
ISBN  : 978-4-8291-1918-1
発行日 : 2007/5

『天王船』[宇月原晴明/中公文庫]

 「黎明に叛くもの」ノベルス版(全4巻)各巻に書き下ろされた短編を収録した短編集。一番長い作品でも100ページありませんが、侮るなかれ。中身は相当濃いです。
 もうすぐ読める(予定)の新作つながりで再読。で、幸いこの短編集は物理的・値段的に一番手に取りやすそうなことだし、ささやかな布教の意味も込めて簡単に感想書いておこうかと。なお、巻末の解説で「隠岐黒」は『黎明に叛くもの』、「天王船」は『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』、「神器導く」は『聚楽』、そして「波山の街」は『安徳天皇漂海記』のそれぞれと緩やかにリンクしていると指摘されていますし、読めば確かにそういう側面もあると納得出来ます。が、どの作品も『黎明』の設定を基盤にしてあるため、個人的にはやはり『黎明』外伝としての印象が強いですね。

「隠岐黒」:暗殺術を仕込まれた少年――若き日の松永久秀が、初めて単独でこなした仕事とその顛末を描いた話。あるいは、久秀と傀儡人形「果心」の縁が繋がった話、とも言えるかも。初仕事そのものは割とあっさり終わってしまうのですが、見所は他の部分。傀儡師という触れ込みで標的に近づいた久秀が技を実演してみせる場面ははっとするほど鮮明。話の後半では、不可思議としか言いようのない果心の存在と久秀が見た夢がなんとも印象的でした。

「天王船」:兄弟子・道三が信長に入れ込むのが気に入らない久秀。帰蝶の輿入れまで決まったと聞くに及び、ある思惑と共に尾張に出向くことにする、という展開の表題作。闇夜に浮かぶ光の船、そこで舞うが如く刃を交える人影二つ……描かれる場景は絢爛豪華以外に表現がありません。

「神器導く」:中国攻めの最中、和平の糸口を探るため密会を続ける羽柴秀吉と小早川隆景。そこに本能寺の変の知らせが入り――中国大返しに関する話。描かれる場景は他の作品と比べていささか地味ですが、その奇想に関しては負けていませんし、何より秀吉と隆景に与えられた性格がこの話を深くしているように感じます。この二人の終盤のやり取りは秀逸。あと、秀吉の涙には胸が詰まる思いがしました。

「波山の街―『東方見聞録』異聞」:フビライ・ハーン治世の大元帝国で、正体不明の信仰を持つ「波山の街」を調査するマルコ・ポーロの話。この話が一番長く、一番派手。フビライ・ハーンの天幕で繰り広げられた三つ巴が凄まじい。「波山の子」や傀儡を彩るいっそ煌びやかな血の舞、それとは対照的に静謐さすら感じるジパーノ爺さんの剣舞がそれぞれ圧巻。自動人形VS老剣士(本当は別の表現がしたいけど、ちょっとネタバレにすぎる気がするので自粛)はもっと見たかったような気もするけど、逆にあれぐらいの分量だからこそ良かったような気もする。そういう派手な部分に目が行きがちですが、大ハーン・フビライ(稀に見るほど大人物として描写されてる)とマルコの関係も見所の一つかと。この強い絆があったからこそ、故郷へと戻った後のマルコには郷愁めいたものを感じてしまいます。

 4編収録してあるわりに解説含めて200ページと短めですし、伝奇小説が好きな方なら試しに手にとってみられては如何でしょう。

作品名 : 天王船
    【 amazon , BOOKWALKER
著者名 : 宇月原晴明
出版社 : 中公文庫(中央公論新社)
ISBN  : 978-4-12-204773-0
発行日 : 2006/11

『カタリ・カタリ トキオカシ2』[萩原麻里/富士見ミステリー文庫]

 神代より続く呪縛に捕らわれ続ける「時置師」の一族。その宿業に立ち向かおうとする、存在しないはずの11人目の「時置師」である少女とその〈対〉の少年の物語、第2巻。

 既に各所で言われてることですが、これで完結編と銘打ってるのは酷い。でも、某コバルトの某「アルス」シリーズ(ちっとも伏せてない)みたいに極悪な場面で以下続刊状態になってないだけまだマシな気がしなくもない(←他社への恨みをわざわざ呟くなそこ) 嗚呼、巻を重ねれば順当に面白くなっていきそうなシリーズだったのになぁ。
 ……嘆いているばかりでもあれなので、内容の感想。今回で一区切りつけなくてはいけなかったからか、いろいろと設定が明らかに。その辺の設定がなかなか創りこまれていて面白かったですし、主役カップルの眞名と誠一が過去に飛ばされ、そこで遭遇したある「時置師」と〈対〉の物語はベタながらも楽しめました。それにしても、前回に引き続き過去編、その終幕で描かれた光と影は、なんともいえない苦さが……。
 登場人物に関しては、現代組は前回から登場しているカップルのみならず、初登場となる「時置師」たちも見てるこっちが恥ずかしくなるぐらいらぶらぶでもうご馳走様という感じでした。しかし、それなりに困難はありつつも幸せに過ごせている彼らの姿があるからこそ、彼女の慟哭が余計にやるせなく感じられました。

 さて。欄月と〈対〉の間に起きた出来事など詳細は明かされずに終わった謎もありますし、なにより眞名と誠一の役割なども気になりますし。何とか続きが読めればいいなと思います。

作品名 : カタリ・カタリ トキオカシ2
    【 amazon
著者名 : 萩原麻里
出版社 : 富士見ミステリー文庫(富士見書房)
ISBN  : 978-4-8291-6390-0
発行日 : 2007/5