時々検索してくる方がいるようなので。

その後調べてご存知かもしれませんが一応宣伝も兼ねて。
『鉄塔武蔵野線』、ソフトバンクSB文庫から9/20に復刊予定らしいです……って、もう明々後日ですな。
新潮版では削られた写真も収録されているらしいので、既読の方も手にとって損はないのではないかと。
……ちなみに私の場合、もうほとんど内容忘れてるので(←かなり前に図書館で借りて読んだ)、ほとんど初読状態になりそうな予感(苦笑)

『王の眼 第4巻』[江森備/角川書店]

 エジプト神話「ホルスとセトの戦い」をモチーフに、架空の古代エジプト王朝の王権を巡って繰り広げられる戦いと愛憎の物語、第4巻にして完結編。
 3巻の段階ではまだもう少し続きそうな雰囲気だったので、4巻で完結となったのはちょっと予想外。大人の事情とかいろいろあったのかなぁと思いつつ、ページ増&行数増&二段組というあたりに作者氏の執念を見たような気が。ただ、それでもハルとセティに描写を絞らなければならなかったためか、他の登場人物に関してはもうちょっと詳細な描写が欲しいと思うところが多々あったのは正直残念。特に、ネブヘトがどういう経緯でセティに対する態度を変えたのかが知りたかったなー。3巻ではいささか軽薄で思慮が足りない女性という印象が強かっただけに、最終巻での格好良さは一体何があったんだと……。彼女に限らず、女性陣は皆たくましく、己の意思を貫いていた印象。
 一方の男性陣。2巻まではもうどうしようもなかったハルですが、アンジェトの決定的な裏切りによって正気に戻ったあとは(あそこまでされないとわからないのか、という気もしなくはない)目覚しい成長も遂げて主役の面目躍如といったところでした。セティは……本人がそれなりに満足する結果だったろうことが救い。逆にネフェルは、ようやく彼にも人並みの幸せが!と思っていただけにあの展開は悲しすぎ。あと、アンプが3巻のセティ並(考えようによってはそれ以上)に悲惨なことになったのは衝撃でした。散々苦労した末にアレというのがなんともかんとも。
 ともあれ、タ・ウィを揺るがした動乱は数々の傷を残しながらも終結。古の掟はあるべき姿を取り戻し、新たな王の誕生によって物語は終幕と相成ります。鉄の時代の到来が近いことが予告されているだけに、安穏とした時間はそう長くはないかもしれませんが、それでも彼らの生があるうちは平和な時を享受できていればいいな、と思います。

作品名 : 王の眼 第4巻
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著者名 : 江森備
出版社 : 角川書店
ISBN  : 978-4-04-873570-4
発行日 : 2004/12/22

『王の眼 第3巻』[江森備/角川書店]

 エジプト神話「ホルスとセトの戦い」をモチーフに、架空の古代エジプト王朝の王権を巡って繰り広げられる戦いと愛憎の物語、第3巻。

 シリーズの中では位置づけ的に外伝。セティが何故簒奪するまでに至ったのか、という話。なお、1~2巻は一般読者を意識したのかかなり抑え目だったJUNE描写ですが、この巻ではリミッターが外れたかのように凄まじいことになってるので、苦手な方はご注意を。ちなみに私はそーいう場面は完全に思考停止して読みました。いや、普通のBLだったら脳内で女性変換して読んだりするんですが、この話の場合は下手にそれをすると悲惨という表現すら生ぬるい事態になるのでそれすらできませんでね……最終的には、「まぁでも天華よりはマシだよなうん」と若干混乱した感想を抱いたり。
 戯言はさておき、感想。……えぇと、とりあえずセティがウシルに向ける感情はストックホルム症候群以外の何物にも感じられないのはどうしたものだろう。つーか、今回はセティ側の視点で話が進んでいくので、ウシルの行動が控えめに言って外道以外の何物でもなくなってるのが問題なんだよなー(←だからちっとも控えめになってないってば)
 そーいう系の災難を筆頭に散々な目に遭いまくり、貴公子然としたセティが見る影もなくなっていくのは悲惨の一言。それでも、ふとした出来事をきっかけに自分を取り戻し始めていき……「今は何年だ?」と彼が尋ねたときにはなんだか胸にこみ上げてくるものがあります。あと、今回の話で重要な役割を果たすプント国の女王アソは立ち居振る舞いが優雅かつ格好良くて思わず惚れそうになりました。

 さて。過去の因縁が明らかになったと同時にまたいくつかの謎が浮上してくるわけですが。果たしてタ・ウィの王権を巡る争いはどのような形で収束していくのか。この時点ではどうにも予想がつきません。初読時には、何とかセティが返り咲いてくれないものかと、(元ネタ的に)無茶なことを考えたなーとちょっと思い出した。

作品名 : 王の眼 第3巻
    【 amazon , honto
著者名 : 江森備
出版社 : 角川書店
ISBN  : 978-4-04-873385-4
発行日 : 2002/7/30

『死神姫の再婚』[小野上明夜/B’s-LOG文庫]

後見人の叔父により、家名目当ての貴族の元に嫁がされることになった没落貴族のアリシア。ところが、結婚式の最中に新郎が急死。そのために『死神姫』と呼ばれるようになったアリシアに、あるとき再婚話が持ち上がる。相手は成りあがりの新興貴族で、とかく噂のある公爵ライセンだった――。

 第9回えんため大賞ガールズ部門奨励賞受賞作。題名に惹かれて購入。

 勝手にシリアスだと思ってたのですが、実際はコメディでした。裏表紙のあらすじに書いてあるように「軽快」だったかといえばちょっと微妙だった気もしますが、ヒロインのアリシアを筆頭にクセのある&変人ぞろいの登場人物たちの繰り広げるやりとりがおかしかったです。ハイテンションまではいかないけど妙なテンションが楽しいというか、そんな感じ。
 難を言えば、展開が唐突に感じるところが多かったことかな。状況やらがころころ変わるのは、まぁ喜劇的といえなくもないけど、問題が持ち上がっても結構あっさりクリアしてしまったりするのが、ちょっと物足りなかったかなーと。

 ともあれ普通に楽しく読めました。次回作にも期待してます。

作品名 : 死神姫の再婚
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著者名 : 小野上明夜
出版社 : ビーズログ文庫(エンターブレイン)
ISBN  : 978-4-7577-3744-0
発行日 : 2007/9/15

『王の眼 第2巻』[江森備/角川書店]

 エジプト神話「ホルスとセトの戦い」をモチーフに、架空の古代エジプト王朝の王権を巡って繰り広げられる戦いと愛憎の物語、第2巻。

 何度読んでも、第1巻後半からアンジェトの「教育」によって、控えめに言って傲慢で嫌なヤツに成り下がったハル(←ぜんぜん控えめになってないし)にはとことんうんざりさせられます……。まぁ、流石に『妖説太閤記』の秀吉レベルまでには至りませんが。ともあれ、この巻の間はハルが始終そんな調子なのに加えてアンジェトの長老二人の人間として嫌な感じの腹黒さに、自然と敵役であるセティ側に立って物を見てしまいます。つーか実際、なんかこの人実はそんなに悪い人じゃない?というのがだんだん明らかになってくるし。あと、この巻で印象に残っているのはアセト追放の前後かな(神話で言えば、ホルスによるハトホル斬首に相当) この巻の締めくくりとなる一文の、美しくも物悲しさが漂う描写と併せてなんとも哀れに感じます。

 さて、ひとまず玉座は手に入れたものの未だ「一の王女」を娶っていないハルには王となる正統性が欠けたまま(玉座は王家に連なる「一の王女」に受け継がれ、「一の王女」の夫が共同統治者として国を統べる、という設定になっている) あくまでハルを道具としてしか見ていないアンジェト族、ハルの現状を危ぶみなんとかアンジェトと引き離そうとする旧知の人々、そして王都を逃れたセティ派の動向など、さまざまな波乱要素を抱えて、物語はまだ続きます。

作品名 : 王の眼 第2巻
    【 amazon , honto
著者名 : 江森備
出版社 : 角川書店
ISBN  : 978-4-04-873270-3
発行日 : 2001/3/26