架空歴史ファンタジー「流血女神伝」、ユリ・スカナ編第8巻にして、全27巻に及んだシリーズの完結巻。
感無量。読了後の素直な感想は、この一言に尽きます。流石に1冊に詰め込むのは限界があったのか、やや駆け足気味に感じる部分もありましたが、それでも「神と人の物語」としては見事に収束した、という印象。
何を語ってもネタバレになりそうなんですが、登場人物たちの生き様には何度も涙しました。主要どころでは、ルトヴィアを決定的な滅亡から守るために最後まで力を尽くしたドーン、グラーシカ、ミュカ。ユリ・スカナ国母として人間的にこれから大きく成長するかと思えたネフィシカ、心の闇に囚われ押しつぶされそうになりながら、いくつかの経験を経てようやく精神の安定を取り戻したイーダル。病魔に冒された人々のため献身を続けたオレンディア、死期の迫る自身を省みずトルハーンとの戦いに挑んだギアス。彼らだけでなくその他の面々も、己の意地と誇りを持ってそれぞれの人生を生き抜いていったのだと、その迫力が文章の行間からも伝わってきたような気がします。……ただ、バルアンひいきの人間としては彼の出番が少なかったのがなんとも寂しくはありましたが。まぁ確かに、「喪の女王」では主要登場人物から外れてたけど……でも、少ない描写の中にカリエに対する感情が垣間見えたのはちょっと嬉しかったです。
そして、最後になりましたが、常に過酷な運命に翻弄されながらも頑張った主人公のカリエ。彼女に関しては、おおよその言いたいことを作中の最後でまとめられてしまったので、ただ、お疲れ様と述べるに留めておきます。
さて、「流血女神伝」は完結しましたが、あとがきによれば子供世代の話の構想もあるそうで。神々の支配から解き放たれた「人の物語」はどのようなものになるのか。今から楽しみです。