亡くなった国王の姪であったため、その後継者を巡る陰謀に巻き込まれることになった「森の姫」シルヴィの物語、2巻目にして完結編。
前巻を読んだ段階では全3巻ぐらいの構成かなーと思っていたので、読了時真っ先に思い浮かんだことは「あれ、もう完結しちゃった?」でした。
登場人物それぞれが迎えた結末は納得のできるものですし、堅実なファンタジーだったと思います。しかし、なんかこう、あれこれ詰め込んであるけどどうにも淡々とした話運びというか。女たちの密かな行動等、盛り上がりそうなエピソードはいくつも用意されているのに、あっさり流されてしまって肩透かしを喰らうというか。地味な話も嫌いではありませんが、こういう設定の話ならもう少し派手にやってもいいのでは、と思ったり。
それから、登場人物たちの心の変遷も、もう少しぐらい詳細を書き込んでくれるほうが好みだったかなー。「なんで突然そういうことに!?」というのが結構あったような気がするので。あと、敵役・悪役がそろいもそろって魅力が感じられなかったのも残念。フェネストラはもう少し書き込みがあれば、最終的な評価がもう少し上だったかもしれないと思うけど。
そんなわけで、全体的には普通に面白かったとは思うけど、もう1冊ぐらい分量があればもっと面白くなったんじゃないかなーというのが正直な感想。そういう意味では、ちょっともったいない作品でした。
12月3週目の購入メモ。
『北宋風雲伝 15』[滝口琳々/プリンセスコミックス]【amazon ・ boople ・ bk1】
『約束の街7 ただ風が冷たい日』[北方謙三/角川文庫]【amazon ・ boople ・ bk1】
『水滸伝 15』[北方謙三/集英社文庫]【amazon ・ boople ・ bk1】
『江戸奉公人の心得帖 呉服商白木屋の日常』[油井宏子/新潮新書]【amazon ・ boople ・ bk1】
『夢の守り人』[上橋菜穂子/新潮文庫]【amazon ・ boople ・ bk1】
『傭兵王 創世の契約3』[花田一三六/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]【amazon ・ boople ・ bk1】
『Dクラッカーズ+プラス 世界-after kingdom-』[あざの耕平/富士見ファンタジア文庫]【amazon ・ boople ・ bk1】
『妖異金瓶梅』[山田風太郎/扶桑社文庫]
最近また風太郎作品を再読してるので、そのままの勢いで感想も書いてみる。
この作品は題名からも一目瞭然なように、中国四大奇書の一つ『金瓶梅』を下敷きにし、新たに生み出された風太郎流『金瓶梅』。全15編に加え、ボーナストラックとして他版では未収録の「人魚燈籠」も収録した完全版。『明治断頭台』と並んで、山風ミステリの中でも傑作と評価を受けています。
中国は宋代、好色漢としても名を馳せている豪商・西門慶の館を舞台に、西門慶の親友・応伯爵がしばしば起きる怪死事件を解決していく連作短編集、と言えなくもないのですが、もう一つの特徴のほうが明らかにインパクトが強い(そしてその特徴はネタバレ直結なのであらすじ紹介では使えない) まぁとりあえず、第1話「赤い靴」のラストで明かされる、この作品世界であるからこそ許される真相と動機、そして結末に驚くべし。第2話以降もそれぞれに趣向を凝らしたミステリとなっていますが、この「様式」は共通したものになっています。下手をすれば駄作になりかねない仕掛けを使っているにもかかわらず、どれもが水準以上の完成度を誇っているのは流石の一言。作者自身が「意に満たない」と判断する「銭鬼」ですら、一読者としては「……どこが気に入らなかったんですか先生」と聞きたくなるし。
登場人物では、中心人物の一人で淫婦姦婦の名をほしいままにする潘金蓮がとにかく凄まじい。その存在感たるや、彼女の前には他の全てが脇役と化すほどで、もはや別格としか言いようが。紛れもなく毒婦であるとは分かっていても、読み進めるうちにふと気がつけばその魅力の虜になってしまっているのが不思議。あとは探偵役の応伯爵も良い味出してました。この人、本当にいろんな意味で駄目男なんですが、それでも最後に見せた男気と想いの深さには心打たれます。
フェチを通り越して変態的な愛欲と、一人の男を巡る女たちの嫉妬と憎悪が生みだす数々の犯罪を描いた物語は、『水滸伝』の英雄豪傑が本格的に絡んでくる「凍る歓喜仏」以降一気に長編に変化していきます。ラスト4章の怒涛の展開、急速な崩壊が生みだすカタルシスは強烈。一人の女を間に挟んだ男と女の対極的な行動、哀切極まりない終幕はこれまでの乱痴気騒ぎの後始末とでも言うべきか。酔いから醒めたような、なんとも言えない感慨が込み上げてきます。
『ぶたぶたと秘密のアップルパイ』[矢崎存美/光文社文庫]
生きてるぬいぐるみ「山崎ぶたぶた」を主人公にしたシリーズ最新作。
今回のぶたぶたさんは、会員制(!?)の喫茶店の店員。まぁ、会員制と入っても堅苦しいものではなく、店長のお茶目で支店がそういう扱いをされているだけなのですが……ともあれ、ここの会員になるにはぶたぶたさんに秘密を打ち明けるべし、という条件が(一応)あったりして。そんな喫茶店に些細なきっかけから足を運ぶようになったイラストレーターの女性や男子高校生たちが、ぶたぶたさんと交流する中でそれぞれの抱える「秘密」を語り、その重荷から開放される、というのが大体の流れ。基本的な雰囲気は、まぁいつもと変わらずだし、打ち明けられる「秘密」もほとんどはそこまで重いものでもなかったので、安心してまったり楽しめました。が、「妖精が見える」という女性の話は、少し痛いものが……以下、ネタバレにつき反転→あの書き方だと、つまり彼女は脳に何か病気を抱えていた、ということになるのかなぁ。最後にはハッピーエンドに向かいそうなので安心はできましたけど。そして、彼女との会話の中でぶたぶたさんが「自分が化け物だという自覚はある」云々と言ったのが、また痛かった……。←
途中で悲しい気分になっても、最後にはほっと心温まるものが残るのがこのシリーズのいいところですね。読了後はそんなに好きなわけでもないのに、無性にアップルパイが食べたくなりました。
記憶が定かではありませんが。
「入った!めーる」なるものが届いて、おお!と喜んでたら、25巻の話でした。おしい。それは持ってる。27、28巻の入ったメールが届くのを待ち望んでるわけですが、なかなか難しい模様です。(中略)
あ、来週といえば、偶然にも来週、誕生日を迎える僕がいますね。
いやいや、何も催促してませんよ?
deltazulu様お探しの「封殺鬼」旧シリーズ終盤2冊ですが、確か数日前に行動範囲の古書店で27巻は見かけたような気がうっすらと(28巻があったかは覚えてない)
もしよろしければ確認&あればプレゼント代わりに捕獲してきますが。