氷室冴子さん死去。

私は少女小説全盛期、どちらかというとティーンズハート派だったのですが、『ジャパネスク』とか普通に好きでした。
またいつか、一般小説からでも新作が出たら嬉しいなーと思っていたのですが……まだお若いのに、残念です。
ご冥福をお祈りいたします。

『警視庁草紙(上) 山田風太郎明治小説全集1』[山田風太郎/ちくま文庫]

 山田風太郎明治小説全集の1巻目。一連の明治小説群の開幕となった、記念作にして代表作でもあります。

 物語の舞台となるのは、「江戸」から「東京」に名前が変わって間もない明治の御世。元南町奉行・駒井相模守信興(通称隅のご隠居)と元同心の千羽兵四郎らは、ひょんなことから大警視・川路良利率いる警視庁を相手に回し、様々な事件にかかわることになる……というもので、手法的にはお得意の連作短編。上巻は特に、単発の事件が起こっては、警視庁の手法が気に食わないご隠居たちがそれをからかうように様々な形でそれに関わってくる、というパターンが多いかな。警視庁の面々をあの手この手で出し抜く「江戸の生き残り」の面々の活躍が、なんとも痛快です。
 また、後世に名を残す偉人たちのカメオ出演が明治物の特徴の一つでありますが、この作品は特に大物ぞろいな印象があります。冒頭が西郷が征韓論に敗れて下野するところというのが、その印象を強くしているのかも。その後も、政府高官から文豪、犯罪者等々、実在・架空を問わず様々な立場・思想の人物が次々と交差し紡がれていく物語は、まさに波乱万丈・豪華絢爛といった感じです。それにしても、井上馨はこうしてみるとやっぱり無茶苦茶な人だよなぁと思った(笑)

 さて、元南町奉行所と警視庁の面白おかしい知恵比べが、果たしてどのような結末を迎えるのか。気になるところで、以下下巻。

作品名 : 警視庁草紙(上) 山田風太郎明治小説全集1
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著者名 : 山田風太郎
出版社 : ちくま文庫(筑摩書房)
ISBN  : 978-4-480-03341-3
発行日 : 1997/5

現在療養中。

一向に体調が良くならないので、まずは回復しないとなーと最近はひたすら省エネモードで活動してます。
…………しかし、いっそ思い切って転職してしまうのが一番効果的な気がしなくもない。(←現在職場でいろいろありすぎて、日々蓄積されていくストレス量が凄いことになってる人)

『アンゲルゼ 最後の夏』[須賀しのぶ/集英社コバルト文庫]

 今回の内容を相当乱暴にまとめると、「未孵化」として軍属になることを強いられた陽菜の奮闘編というところでしょうか。……まぁ、「奮闘」の一言で済ませるには(作者曰く「多少」)ハードなことになってますが……。

 1巻の時点では伏せられていた世界設定やら何やらがちらほらと見え隠れし、話そのものへの興味が増してきた感じ。つーか、主人公たちの置かれている状況が過酷と言うにも限度がありますよね……この子らまだ中学生ぐらいなのに、となんとなくやるせない気分になってしまったり。
 陽菜と楓は、短い間にそれぞれ見違えるような成長をしましたが、裏を返せば二人とも、置かれた状況は違えど子供でいることが許されなくなってしまったともいえるわけで……この先もまだまだ数えきれないほどの苦難が待ち構えているのでしょうが、頑張ってほしいなぁと切実に思います。また、複雑な事情を孕んだ陽菜とマリア、そして同じ「未孵化」である有紗との関係がどうなっていくのかも気になるところです。
 そのほかの登場人物では、覚野君の印象が好転。いや、1巻の時点でもそう悪くはなかったけど、この巻での行動を見てもなんだかんだで良い子ですよね彼。口と態度で損してるけど。あと、キーパーソンの一人であろう敷島氏は、今のところは陽菜の目線を通していることもあってか普通に冷血漢というか外道な印象が強いですが、それでも何か裏はあるんだろうなーという雰囲気はあるし。どういう形で彼の抱える事情が明かされていくのか、今から楽しみ。

 さて、次の巻ではどのような展開が待っているのか。作者公式サイトによれば9月発売予定らしい3巻が待ち遠しいですね。

作品名 : アンゲルゼ 最後の夏
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著者名 : 須賀しのぶ
出版社 : 集英社コバルト文庫(集英社)
ISBN  : 978-4-08-601172-3
発行日 : 2008/6/3