0806購入メモ(その5)。

『覘き小平次』[京極夏彦/角川文庫]【amazonbooplebk1
『明治開化 安吾捕物帖』[坂口安吾/角川文庫]【amazonbooplebk1
『髑髏検校』[横溝正史/角川文庫]【amazonbooplebk1
『知っておきたい「味」の世界史』[宮崎正勝/角川ソフィア文庫]【amazonbooplebk1
『七月七日』[古処誠二/集英社文庫]【amazonbooplebk1
『世界の歴史7 宋と中央ユーラシア』[伊原弘・梅村担/中公文庫]【amazonbooplebk1
『〈本の姫〉は謳う 3』[多崎礼/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]【amazonbooplebk1

『外道忍法帖 忍法帖シリーズ(二)』[山田風太郎/河出文庫]

 昨年から細々と続けている、山田風太郎作品は面白いんだよーとWebの片隅で主張してみる企画。明治小説の感想はコンプしたので、あとはのんびり気が向いた作品の感想を書いていくことにする。で、今回は『外道忍法帖』。
 内容はというと、ジュリアン中浦がローマ教皇より賜った百万エクーの金貨の所在を巡って文字通り「道を外れた者たち」が繰り広げる、凄惨な三つ巴の戦いを描いた物語。忍法帖でも屈指の殲滅戦・大量殺戮が行われる一冊としても有名。ちなみに作者自己評価は「B」。

 この作品でまず目につく特徴といえば、やはり登場する忍者の多さ。金貨の隠し場所の手懸かりとなる15個の鈴を守る切支丹にしてくの一の「童貞女」15人、切支丹殲滅を目論む松平伊豆守配下で一族復興の悲願のため働く天草党15人、そして政府転覆を目論む由比正雪手飼いの甲賀忍者15人と、総勢45人の忍者たちが血で血を洗う戦いを繰り広げていくのですが……。なにしろ300ページほどの間にその戦いを詰め込んでいるものだから、ほとんどが名乗ったと思った数ページ後には命を落としていくという、登場人物に感情移入する間もない凄まじいスピードで数々の忍法勝負が消化されていくことに。それぞれの信念を持って闘いに挑み、そしてあっけなく斃れていく彼らの姿は崇高でもあり無惨でもあり。少し離れた位置から物語を眺める役割を担っている天真爛漫な遊女・伽羅には、この悲惨な物語の中の息抜きとしての作用も少なからずありますねー。ああ、あと冒頭の沢野忠庵(クリストファ・フェレイラ)による拷問場面は強烈です。いろんな意味で。

 そして、忍者たちの屍山血河の果てに迎える終幕がまた凄まじい。ついにその姿を現す童貞女の指導者・マリア天姫。その本性と思惑が描かれるのは数ページのみであるにも関わらず、圧倒的な存在感があります。その彼女には敵わずとも、天草党首領・扇千代の最期の行動にも凄みはありますが……彼の場合はそれよりも、その行動に出る前の述懐に胸を打たれます。そして、極めつけのラスト一行。初読のときは本気で絶句しました。いや、冷静にみると確かに推測できる材料は揃っているけど、それでもまさかこれをオチにもってくるとは思わないって普通……。

作品名 : 外道忍法帖 忍法帖シリーズ(二)
    【 amazon , honto
著者名 : 山田風太郎
出版社 : 河出文庫(河出書房新社)
ISBN  : 978-4-3094-0740-1
発行日 : 2005/4

『BLACK BLOOD BROTHERS 9 -ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近-』[あざの耕平/富士見ファンタジア文庫]

 吸血鬼と人間の共存地帯『特区』と、そこに住まう吸血鬼と人間たちの物語、「BBB」シリーズ長編第9巻。

 前半は、8巻でのミミコの声を受けて世界中に広がった波紋と「乙女」として一杯一杯になりながらも「頑張る」ミミコの描写。人間社会のバッシングについては、具体的な描写がなかったのが救いか。一方の吸血鬼社会では、ミミコの言葉に魅力を感じつつもあと一歩踏み出すことを躊躇っている血族たちの描写にもどかしさを抑えられませんでしたねー。そして、ミミコは様々な重圧の中で彼女の戦いを頑張っているのですが、ヒバリが「殉教者のよう」と評したようになんともいえない痛ましさを覚えてしまいました。それだけに、アンヌとの会話はしみじみと良かったなぁ。何度も悩み自分を見失いながらも、本来の美質を損なわずに成長していく彼女は実に魅力的です。そのほかの登場人物たちの描写も、これまで彼らが過ごしてきた日々を思うと感慨深いものがあります。サユカの急速な成長も、説得力があって良かったなー。彼女に絡んではセイにも地味に見せ場があって実に良い。

 そして、ミミコを九龍化せんとシンガポールに乗り込んできたカーサたちの行動が始まってからの流れがまた凄かった。とりあえず、尾根崎会長が男前すぎ。あと、今回のナブロの描写はいい意味で意外でした。もっと直感的な人なのかと思ってたよ……。そして、今回の話を語る上で避けて通れないアンヌvsカーサの因縁の対決。かつての血族の長を前にしたカーサの抑えられない動揺、言動が無性に哀しかった。そして、アンヌがカーサに向けた言葉の数々に、実はとてつもなく分かりにくかっただけで三姉妹はカーサを血族としてそれなりに認めていて、なおかつ旧弊を打ち破ることを期待してたりしたんじゃないかとちょっと思った(夢見すぎですかねぇ)

 からくもカンパニーが危機を乗り切ったあとで始まった、吸血鬼たちの会議は、いろんな意味で想像していた以上にスケールの大きなことに。マーハの宣言に粛然としたり、意外な人の生存に嬉しくなったりしましたが、やはり一番の見どころはジロー。ここにきてヒーローの面目躍如というか。「聞け!」のあとの流れには、なんか泣きそうになりました……。

 さて、いよいよ本格的に始まるのだろう特区奪還の動きも気になるところですが、次巻ではまず香港での出来事が語られるとのこと。果たして彼の地で何が起こり、どんな因縁が生じたのか。今回名前が出た「リズ」は、その時にどのような役割を担った人だったのか。今から語られるのが楽しみで仕方がないですね。

作品名 : BLACK BLOOD BROTHERS 9 -ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近-
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : あざの耕平
出版社 : 富士見ファンタジア文庫(富士見書房)
ISBN  : 978-4-8291-3299-9
発行日 : 2008/6/20

0806購入メモ(その4)。

『月明かりのクロースター 虚飾の福音』[萩原麻里/一迅社文庫]【amazonbooplebk1
『片手間ヒロイズム』[小林めぐみ/一迅社文庫]【amazonbooplebk1
『BLACK BLOOD BROTHERS 9 -ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近-』[あざの耕平/富士見ファンタジア文庫]【amazonbooplebk1
『晴れた日は、お隣さんと。』[福田栄一/MF文庫ダ・ヴィンチ]【amazonbooplebk1

『ソフィアの宝石 -乙女は、彼に誘われる-』[渡海奈穂/B’s-Log文庫]

 両親の死後、伯父の公爵に引き取られた庶民の少女が貴族社会の中で奮闘する姿と、王家に関わる反体制派の陰謀が絡む「ソフィアの宝石」第3巻。

 今回はなんとか社交界デビューを果たしたリディアが王太子妃に見初められて(!)王宮に招かれたことをきっかけに、様々な想いが交差して……という展開。
 スレイの婚約者である隣国のルシーナ姫が登場。この人が、また男前で格好良かったです。まぁ、婚約者と言ってもスレイとの間に特に良い雰囲気が漂っているわけでもないので、恋愛方面では彼女の存在が事前に予想していたほどには効いてこなかったのはちょっと残念だったかもですが。その代りに(と言っていいのかどうか)王太子がリディアを召しだしたことで、お互いに今まで気が付いていなかった感情の動きやなんやかんやが見えてきたりして、何度もニヤニヤさせられました。そして止めとなったのが最後のほうの二人のやりとり。もう、思いっきりごろごろ転がってしまいましたよ。しかし、リディアは自分の想いを自覚したけど、スレイのほうはどうなんだろう。次巻でそのあたりも描かれるといいなぁ。
 そして、今まで思わせぶりにほのめかされていた王家の秘密も明らかに。……正直、今からでもリディアと王太子がくっつけばある意味問題解決するんじゃないかと思ったけど、さすがに今の流れでその展開はないだろうなぁ(苦笑) ともあれ、このあたりの問題が今後どのようになっていくのかも気になるところ。

 さて、いろいろ事態が動いたことで、次の巻ではどんな展開が待っているのか。楽しみです。

作品名 : ソフィアの宝石 -乙女は、彼に誘われる-
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著者名 : 渡海奈穂
出版社 : ビーズログ文庫(エンターブレイン)
ISBN  : 978-4-7577-4292-5
発行日 : 2008/6/16