『身代わり伯爵の脱走』[清家未森/角川ビーンズ文庫]

 庶民派少女ミレーユと、おかしな連中たちの繰り広げる王道ラブコメ、第5巻。この巻から第2部「シアラン編」に突入。

 今までの話でいろいろとほのめかされていたシアラン公国関係の伏線がいよいよ表面に。必然的に展開はちょっとシリアスなことになってましたが、雪像とかフレッドがキレた様子とかミレーユ脱走がらみとか、その他にもいろいろ笑える部分は相変わらず笑えます。
 で、展開が展開なので無自覚(?)馬鹿ップルなミレーユとリヒャルトの関係も変化を余儀なくされてしまいましたが、これでもかというぐらいに伝わってくるお互いにお互いを想っている様子やようやく自覚し始めたミレーユの暴走など、今までとはまたちょっと違う楽しみがあって堪能いたしました。……どう考えてもライバル的存在にはなれそうもないヴィンフリート王子が、若干気の毒ではありますが。あと、フレッドとセシリア王女の仲も進展すると嬉しいんだけどなぁとちょっとヤキモキ。

 さて、庶民派少女の奮闘は実を結ぶのか、王子様はあとがきどおり男らしく格好良く活躍できるのか、「復讐してやる」宣言が地味に恐ろしいお兄ちゃんは次はどんな手を考えているのかetcetc。いろいろ気になる要素が盛りだくさんな状況で、シアランに舞台を移した物語がこの先どんなふうに転がっていくのか、10月予定の6巻が楽しみなところです。

作品名 : 身代わり伯爵の脱走
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 清家未森
出版社 : 角川ビーンズ文庫(角川書店)
ISBN  : 978-4-04-452405-0
発行日 : 2008/7/1

『ヴァン・ショーをあなたに』[近藤史恵/創元クライム・クラブ]

 下町のフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台に、お客たちが遭遇したちょっとした事件や出来事をシェフの三舟氏が解きほぐしていく、日常の謎系ミステリ短編集第2巻。今回は雑誌収録の5編に、書き下ろしで三舟氏がフランスで料理修業中だったころのエピソード2編を加えた計7編収録。

 1巻目に引き続き、さっくり読めて普通に楽しかったです。ただ、今回はほろ苦感やもやもや感のある話が多かったような気がしなくもない。なんというか、あっさり軽めだと思って注文した料理が、思っていたよりも重めだったみたいな感じというか。もうちょっとすっきり気楽に読める話だとなお良かったのになぁというのは、単に自分の好みの問題ですけどね。そんなわけで、今回収録されている話では「ブーランジュリーのメロンパン」と、表題作にもなっている「ヴァン・ショーをあなたに」の2編が、途中の展開もあまり重くはないし読後感も良いしでお気に入り。
 あ、作中の料理は相変わらずとても美味しそうでした。それだけに、お腹が減ってるときに読むととても危険な予感。

 創元のサイトでシリーズ扱いされているということは、3巻以降も予定されているのでしょうか。だとしたら、ちょっと楽しみです。

作品名 : ヴァン・ショーをあなたに
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 近藤史恵
出版社 : 創元クライム・クラブ→創元推理文庫(東京創元社)
ISBN  : 978-4-488-02529-8 → 978-4-488-42705-4
発行日 : 2008/6→2015/2/27

0806購入メモ(その6)。

『身代わり伯爵の脱走』[清家未森/角川ビーンズ文庫]【amazonbooplebk1
『巫女姫様とさくらの契約 勾玉花伝』[めぐみ和季/角川ビーンズ文庫]【amazonbooplebk1
『プリンセスハーツ ~乙女の涙は最強の武器!の巻~』[高殿円/小学館ルルル文庫]【amazonbooplebk1
『ヴァン・ショーをあなたに』[近藤史恵/創元クライム・クラブ]【amazonbooplebk1

有意義なストレス発散?

なんだか今日はいつもよりストレス上昇度が高かった。体力的に余裕がないと、普段は流せる発言も許せなくなるよね……(遠い目)
まぁともかく、ストレスを過剰に溜めこむのはどう考えても良くないので、とりあえず資格試験の問題集にこのイライラをぶつけてみた。
で、がりがり問題解きまくってちょっとすっきり。……正答率については考えると悲しくなるからちょっと忘れることにする(←いや、それ重要だろう)
せっかく気分が乗ったので、今日はもう少し問題解いておこうっと。

『〈本の姫〉は謳う 3』[多崎礼/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

 「〈本の姫〉は謳う」、第3巻。これまでと同じく、スペルの回収を続ける少年アンガスとその仲間たちの冒険と、地上に落ちた天使の青年アザゼルの視点から描かれる過去の悲劇が交互に語られていきます。

 今回も、期待通りに面白かったです。「現在」のアンガスの物語はある意味王道と言ってもいいような流れなんですけど、やっぱり見せ方が巧いのかな。読んでいて非常にわくわくしてきます。そして、登場人物たちの使い方というか、物語の中で割り振られた役割と位置に無駄がないのもいいですね。アンガスの地味ながらも主人公らしい(痛い目に遭いながらの)活躍もさることながら、彼を支える仲間たちとのやりとりは心なごみました。終盤のアンガスとセラの会話がまたしみじみと良くて。彼らが希望ある未来を掴み取ってくれることを切に祈りたくなります。……それにしても、アンガスと愉快な仲間たちって、そのネーミングはどうかとちょっと思った。分かりやすいけど(笑)
 一方、アザゼルの物語はと言うと……こちらは、おそらくどうあがいても悲劇に終わってしまうということが分かっているだけに、アザゼルたちに共感すればするほどなんともいえないやりきれなさも増していくというか。特に、アザゼルを愛するが故に「大地の鍵」として逃れられない運命に囚われていくリバティの姿が、貴くも哀しかったです。せめて4巻で2人の再会があることを、それができるだけ幸せな状況で実現されることを願ってやみません。あと終盤、リバティの足枷になるまいと、そして彼女を止めるためにアザゼルを死地から脱出させようと、これまで地上で縁を結んだ人々が生還が望めない戦いに身を投じる様子には、思わず涙が滲みました。

 さて、現在と過去の物語の双方が終幕に向けて動いていますが……微かながらも希望の光が見える過去の物語はどのような経緯で悲劇に転じてしまったのか、現在の物語は絶望を跳ね返し希望を掴み得るのか。そして、全てのスペルを回収したとき「姫」が取り戻す記憶はどのようなものなのか。今はただ、最終巻の発売を待つばかりです。

作品名 : 〈本の姫〉は謳う 3
    【 amazon , BOOKWALKER , honto
著者名 : 多崎礼
出版社 : C☆NOVELS FANTASIA(中央公論新社)
ISBN  : 978-4-12-501037-3
発行日 : 2008/6