『身代わり伯爵の潜入』[清家未森/角川ビーンズ文庫]

 庶民派少女ミレーユと、おかしな連中たちの繰り広げる王道ラブコメ、第6巻。

 全体的にはまだまだ舞台を整えている巻、という印象。まぁ、彼らの目的を思えば猪突猛進に動くわけにもいかないから、その辺は仕方がないといえば仕方がないか。シアラン側の状況が今まで以上に見えてきたのは良かったです。しかし、改めて思ったけれど、シアラン王家の家系図はややっこしいなぁ……。
 雰囲気的には、前巻でシリアス方面に舵を切ったのかと思いきや、ミレーユその他の本領発揮のおかげかいつもの軽妙なノリも復活し、シリアスありコメディありととても楽しかったです。ミレーユの奮闘(ただし空回り気味)とかいろんな意味でノリノリなフレッドとか男前度急上昇中な第二王子とか、読んでてニヤニヤした。一方で、リヒャルトの肝心なところでのヘタレぐあいには苦笑い。いや、ミレーユが大事なのはわかるんだけど、でも、突っ走りだしたミレーユが途中で止まるわけがないといい加減に学習しててもいいんじゃないかと(何気に酷い言い草)

 さて、今回はまだまだ序盤戦開始前という感じでしたが、さすがに次の巻ではもう少し状況が動くだろうし。一体どんな展開になっていくのか、楽しみなところです。

作品名 : 身代わり伯爵の潜入
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著者名 : 清家未森
出版社 : 角川ビーンズ文庫(角川書店)
ISBN  : 978-4-04-452406-7
発行日 : 2008/10/1

『火鳳燎原(台湾版) 31~32』[陳某/東立出版集團有限公司]

火鳳燎原台湾版31~32巻。下?戦の結末まで。邦訳版で楽しみにされている方もいらっしゃるでしょうから、ネタばれにすぎると思う部分は気持ちぼかして書いてみる。(読んでる人には分かるかもだけど←意味なし)

読後の第一声は、「…………うわぁ。」しか言えませんでした。なんつーか、いろいろと衝撃的すぎ。とりあえず、まさかここでこの人が退場するとは思ってなかった。可能性的にはまだ生き延びられる(演義とかではあの人のところに行ったりしてるし)人だし、その展開になれば彼との再会もあったり今後も活躍の余地はあるよなーと思ってたんですが、見通しが甘かった。それにしても、今まで物語の中核に関わってきたキャラをさっくり切り捨てるとは、陳某先生も容赦がない。そして、その死すらも利用して、着実に曹操陣営に喰い込んでいく司馬懿。今更ながら、この人も引き返せないところまできてるよなーとしみじみ思った。
もう一人、初期から中核にいた人物では呂布もついに退場。彼に関しては流石にそろそろだろうと覚悟はしていたので、そういう意味では衝撃は少なかったですが、それでもやはり感慨深いものがありました。あと、命乞いする場面での曹操とのやりとりが、地味に良い味出してるなーと思った。
その他、高順と陳宮。一人は戦場で、一人は刑場で。それぞれ自分の在り様を貫いたこの二人の散り様は、涙なしでは読めませんでした。くそぅ、二人とも格好良すぎだろう(涙) 一方、生き残り組となる張遼。彼の微妙な心境の変化はこれまでに描かれてきましたが、それでもまだ決定的といえるほどでもなく。いったいどういう具合に投降となるのかなーと思っていたら……おおお、そうくるのか。この場面は、長兄が格好良くてもうどうしようかと。つーか、長兄は何気に腹黒いというか計算高いというか、とにかくいちいち美味しいところを持って行き過ぎだ。

そして、最後。嗚呼、ここでそうなるのか。ここで、そうなってしまうのか……。以前は、ここまでの距離はなかったのに。これで彼らは本当に、決定的に、決別してしまったんだなぁと思うとすごく切なくなってしまいました。ずっと「公子」と呼んでいるのも地味につらいなぁ(これまでは基本的に字で呼んでたはず)

さて、33巻からはどうやら再び江東編となるようで。展開的にそろそろ孫権登場だろうし、楽しみです。……ところで、次回予告の「八怪」って何……?

『悪魔のソネット 美形悪魔は契約しない!?』[栗原ちひろ/角川ビーンズ文庫]

 先日「オペラ」シリーズが無事完結となった栗原ちひろさんの新作。帯に逆ハーの文字が踊っていたり挿絵が新條まゆさんだったりと、「オペラ」の対極を行くような諸々にちょっと怯えつつ手に取ってみた。

 読んだ感想としては、王道な少女小説的ファンタジーだなーという感じ。美形嫌いなヒロインの旺盛すぎる好奇心やなんやかんやからくる行動とか、やる気のない悪魔+αの漫才じみたやりとりとかは、よくあるといえばそうだけどやっぱり楽しかったし、シリアスな場面での雰囲気や会話も悪くなかったし。まぁ、新シリーズの1冊目としては、普通に面白かったというところ。無意識に「オペラ」の濃さを期待していたらしく、普通すぎてちょっと拍子抜けしてしまいましたが、それはこっちの勝手ですしねー。

 「オペラ」シリーズも最初はそんなに「面白い!」と思っていたわけではないから、こちらも展開が進んでいけばまたあれこれ裏設定とかが出てきて盛り上がるかも、という期待はもちろんあります。 その一方で、(少なくとも表面的には)ゆるめというか明るめ?な今の雰囲気のままで進むのも、それはそれで面白そう、とも思うし。とりあえず、続巻も購入しようとは思ってます。

作品名 : 悪魔のソネット 美形悪魔は契約しない!?
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著者名 : 栗原ちひろ
出版社 : 角川ビーンズ文庫(角川書店)
ISBN  : 978-4-04-451409-9
発行日 : 2008/10/1

『〈本の姫〉は謳う 4』[多崎礼/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

 「〈本の姫〉は謳う」、第4巻&シリーズ完結巻。アンガスと仲間たちの冒険とアザゼルとリバティの想いの行方、交差する二つの物語の結末が描かれます。

 ちょっと吃驚するぐらい、綺麗にまとまったなぁというのが読後の第一印象。つーか、「現在」のアンガスはまだしも、「過去」のアザゼルの物語がこういう決着をするとは全く思っていなかったです。彼らは悲劇に終わってしまったのだとばかり思い込んでいたので、嬉しい誤算というかなんというか。「いつかあなたに出会うために」というシチュは好物の一つということもあり(何の影響かは言わずもがな)、あの辺のネタばらし&展開はわりあい興味深かったです。他にも、初代アザゼルが「世界」に抱いた想いとか、それまで希望を信じ続けていたアンガスを打ちのめした一連の出来事、最後の戦いでのジョニーの行動、アザゼルとガブリエルの本当の別れなど、見どころは多かったかと思います。個人的好みでいえば、もう少し踏み込んだ描写があればなお良かったのですが。
 そういえば、読了後になんとなく表紙を眺めてて気がついたのですが、各巻さりげなく最後の『鍵の歌』の言葉が副題につけられていたんですねー。この歌がどういう状況でうたわれたのかが分かってから、そして終幕の「彼」の言葉を読んでからだと、その歌に、この物語に秘められた想いがさらにじんわり沁みてくるような気がしますね。

 シリーズ通して、そこをもうちょっと掘り下げてくれれば!と思うこともしばしばありましたし『煌夜祭』ほどぐっとくることもありませんでしたが、それでもなかなかに素敵な物語でした。次回作もまた楽しみに待とうと思います。

作品名 : 〈本の姫〉は謳う 4
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著者名 : 多崎礼
出版社 : C☆NOVELS FANTASIA(中央公論新社)
ISBN  : 978-4-12-501048-9
発行日 : 2008/09

0809購入メモ(その4)。

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『女子大生会計士の事件簿DX.5 とびっきり推理なバースデー』[山田真哉/角川文庫]【amazonbooplebk1
『天魔の羅刹兵 紅道譚』[高瀬彼方/幻狼FANTASIA NOVELS]【amazonbooplebk1
『王妃ラクシュミー 大英帝国と戦ったインドのジャンヌ・ダルク』[ジョイス・チャップマン・リーブラ/彩流社]【amazonbooplebk1
『柳生陰陽剣』[荒山徹/新潮文庫]【amazonbooplebk1
『金春屋ゴメス』[西條奈加/新潮文庫]【amazonbooplebk1
『火鳳燎原 31』[陳某/東立出版集團有限公司]
『火鳳燎原 32』[陳某/東立出版集團有限公司]

『火鳳』は32巻でいよいよ……らしいので、届くのがすごく楽しみー。