命を落とす間際、6年前に逆行した(記憶はそのまま)令嬢ジル。2度目の人生で破滅を回避し、婚約者となったかつての敵国の皇帝とともに幸せを掴もうと奮闘する最強令嬢の物語、第3巻。
今回は、2巻の事件が関連して発生した内乱(未遂)に、卵から孵った竜の王(=ハディスの心)の養育やらハディスの兄弟姉妹たちとの関係やらが絡んだ内容に。
ジルがかっこいいのはいつもどおりとして、今回は旦那様も頑張ってました。というか、1度目はこの時点でかなり精神的に摩耗していたんだろうハディスが、ジルの影響を受けて、良い皇帝になろう、良い国を作ろうと自分の意志で考えるようになっているのに、成長を感じます。そういう彼の変化が、ラーデアの人々やサウス将軍とその部下たちにもちゃんと伝わったこと結果、良い方向に進んだことがまた嬉しい。……とはいえ、あそこで持ち出す方便がパン屋修行なあたりは脱力してしまいますね。らしいといえばそうなんだけど。
新しく登場した兄弟姉妹の関係では、未来を知るジルにとっては最大級の警戒対象になるヴィッセルのだんだん明らかになる拗らせ具合には、まあかつての真意はそういうことだったんだろうと予想していたとはいえそうならざるを得なかった彼の心情に思いを馳せてしまいましたね……。あと、ナターリエとフリーダをクッキーで餌付けしようと試みるハディスに笑った。人見知りのフリーダとのエピローグでのやり取りにまた大笑い。
ともあれ、これでラーヴェ帝国内部のゴタゴタはある程度片付いたのかな、という印象。第一部完、みたいな。まあ、年の近い兄弟姉妹たちがある程度関係改善しただけだから、まだ三公やらもしかしたら前皇帝やらが引っ掻き回す可能性はありますが。それと、忘れちゃいけない女神とクレイトス王国とのいざこざ。今回は、クレイトス現国王のルーファス(通称・南国王)が登場したわけですが、また例によって思わせぶりな発言を……。ジルが神器を手にしたときに流れた幻影といい、ラーヴェが「忘れて」女神が「覚えて」いる神話時代の出来事がどんなものなのか気になるところ。……しかし、今更言っても仕方ないけど、かつてのジェラルドがジルに少しでもこのあたりの因縁を話していたら(話せていたら?)、1度目も別の展開があったのかもなあ。