全10巻予定で始まった大河SFシリーズ、ついに最終巻(3冊予定)の刊行開始。
1章は「いきなり時間が戻った!?」と思ったらまさか、晩年のチカヤ(と彼女の曾孫)が登場するとは……。断片的な情報から彼女の歩んだ人生に思いを馳せ、最後に示された彼女の「終生の友」青葉からの手紙にじんわり……今巻のタイトルにその名が(チカヤの台詞から考えれば、象徴のようなものとして)含まれていることからも、彼女の示した在り方は重要な要素ではあるんだろうなあ。いずれにせよ、このエピソードからそう遠くない未来であったろうチカヤの最期が、彼女にとって納得のいくものであったことを信じたいと思う内容でした。
あと、3章ではセレスの地下に逃れた子どもたちが生き延びるために戦っていた頃、冥王斑の蔓延する太陽系に残された人類はどうなっていたかが、2PA艦隊副司令官コルホーネンの口から語られることに。いや、「宿怨」での描写から酷いことになってるんだろうなと思ってはいたけど、ある意味予想を上回る状況だった……。「宿怨」でキーパーソンのひとりだったブレイドは、彼の味わった苦難を思えば軽々しく言ってはいけないんだろうけれど、それでも、彼との交流もあってコルホーネンが少なからず変わったことを思えば、やはり生き延びてくれてよかったなあと、そう思います。つーかブレイドが最期まで「救世群」と呼んでいたのが地味に胸にきましたね……。
ここだけで1冊書けるんじゃないですか?と言いたくなる濃さの1章・3章を挟んで語られる最新の時間軸――MMS(周辺の宇宙空間含む)での出来事は、他宇宙種族との艦隊戦等派手なことも置きましたが、それよりも奇縁宿縁でセレスに集った「人々」がこれまでの情報を整理し、与えられた状況の中で考え、自分たちが向かう方向性を定めていくという、決戦前の準備を整えている状況。とりあえず、前巻の総女王の描写から最終的に味方になるか敵になるか立ち位置が微妙だったMMSカルミアンの女王、リリーの導き出した結論はかなり心強かった。そして、これまで表に出ることがなかったノルルスカインが、ここにきて自身も盤上にあがることに。イサリの指摘と宣言も併せて、この難局で彼らが大事なもの―を取り戻すことができるのか、大いに気になるところ。
そんなこんなであちこちがいろいろと大変な状況になってるだけに、カドムとイサリ、アクリラの三人やりとりはうん、癒やしでした。癒やされたあとに、リリーが意表を突く案を持ってきたり、「ミヒル……!」としか言えなくなる状況が描かれたりしたけど。
これまで存分に広げられた物語は確実に終わりに向かっているのに、一方で、まだまだ広がっていっているようにも感じる不思議な感覚を味わいつつ。Part2ではどんな展開が待っているのか、楽しみに待ちたいと思います。