1~2年に1冊ペースで単行本発売中の、ヴィクトリア時代の英国貴族の館を舞台にした物語、第10巻。
虚飾が剥がれ歪みが白日のもとに晒されたロウランド家に、「えぐい……つらい……」としか言えなくなっていくのがなんともはや。これまではどんな目にあっても立ち上がり続けてきたレイチェルもいろいろありすぎて心折れかけてるし……ザックの悪意のない言葉が敬虔な彼女の精神にとっては最悪の一撃になったのが、またつらい。一方で、明らかになっていくアンナの精神性、あるいは病状。あの病気かそうか……と納得しつつ、少女の頃から前に進めなかったが故ともいえる彼女の現状が痛々しい。「彼女の妄想」と作者のいうラスト2ページが現実になっていたらあるいは変わっていたんだろうか。
あと、今回驚いたのがモルゴース伯母様。え、なにふつうに正論だし良い人!?と今までとのギャップにちょっと混乱するほどだった。中でも、アンナの放った、彼女としては最大の攻撃だったろう言葉を、あっさりと受け止めた上に何倍にもして返した伯母様は、怖いけど正直強いしかっこいいとさえ思った。立ち位置が変われば彼女もまた見え方が変わるということなんだろうけど、こうなると逆にはにろのアレがどこまで正確なことなのかわからなくなってきたような。今後の展開で物語の空白が埋まっていけば、そのあたりの謎も見えてくるんだろうとは思いますが、はてさて。
さて、終盤はまた衝撃の展開でしたが、これが最後の一押しで、なのかな……。11巻を読むのが楽しみでもあり恐くもあり。……それにしても、この章はレイチェルとウィルの関係がメインだと思ってたのに、今の段階ではいろんな意味でアンナが中心になってるな……