「ここを制した者は著名な国際コンクールで優勝する」というジンクスもあって、近年注目を集めている芳ヶ江国際ピアノコンクール。コンクールに出場する4人を中心に彼らの師や審査員等周囲の人々も含めて、第一次予選前のオーディションから本戦までを描いた作品。
本屋で見かけてなんとなく気になっていたところに直木賞の候補にもなったということで、久しぶりに恩田陸作品を読んだのですが、いやあ、面白かった。最後まで一気読み。
コンテスタント4人のうち、より密接に関わる若き天才3人がそれぞれの音楽に刺激を受けてコンクールの最中にめざましく成長し己の音楽をより確固たるものにしていく姿は青春物らしく微笑ましくもある一方、様々な描写や表現を尽くして描かれる彼らの音楽はまさに圧巻の一言。演奏の音源を流しながら読んで、会場にいる気分に浸ってみたりしてました。また、メイン3人とは少し距離を取って語られる最年長のコンテスタント、高島明石氏。このコンクールで音楽家としての自身に区切りをつけようとも考えていた彼の、音楽家としての想いと人生の物語は、厳しさだけではなくじんわりと心に染みるような暖かさがあって、とても良かったです。
とても良いものを読んだなあ、と満足して本を閉じることができた一冊でした。
作品名 : 蜜蜂と遠雷
著者名 : 恩田陸
出版社 : 幻冬舎
ISBN : 978-4-344-03003-9
発行日 : 2016/09/23