長編伝奇シリーズ「封殺鬼」、ほぼ1年ぶりの新エピソードは 「鵺子ドリ鳴イタ」「帝都万葉」に引き続き、神島桐子が主役のエピソード。見合い話から逃げるため東京の女学院に通うことになった桐子は、軍が絡んでいるその学校のとある噂を探ることに――と、そんな展開。
感想。桐子様が乙女でとてもかわいかったです。キャンパス文庫版で読んだ最強婆様な印象が脳内で優勢となっている彼女ですが、若い時は乙女だったのね。「花闇」や「鵺子ドリ」の頃の彼女はもっと張り詰めた雰囲気があった彼女が、ここまで人間らしく乙女らしくなったのは、やはり志郎や宇和野ご夫妻の影響が大きいのだろうなぁ……としみじみ。
そんな彼女、今回は生まれて初めて女学校に通うことになるのですが。戸惑いつつも初めての女友達!と一緒に学園生活を過ごしたりとか、恋のライバル!?登場に心穏やかでいられない様子とか、もうとにかく桐子かわいいよ桐子!としか言いようのない。卵焼きとかビーズとか女の子のお茶会とか、封殺鬼でこういうエピソード読めると思わなかったよ!と随所で大喜びでしたが、なかでも終盤の赤面シーンはもう……! 志郎の天然めー!と床ローリングしました。あ、すっかり保護者となってる鬼二人も相変わらずでした(笑)
そんな感じで、学園の噂や軍の影など不穏なものを感じつつも、おおむね楽しい学園生活が描かれた上巻でしたが、しかし、時代背景的にも平和な雰囲気のままでは終わらないのだろうなぁ、と予想がついてしまうのがなんとも切ない(それを言うなら、すでに終着点が分かってしまっている桐子と志郎の関係の結末も、なんですがね……) 「件」であるとも噂される、学園に棲む魔性の正体は如何なるものか。とりあえず、来月予定の中巻が待ち遠しいです。願わくば、下巻も早く読めますように。