『源氏 物の怪語り』[渡瀬草一郎/メディアワークス文庫]

 現在電撃文庫で「輪環の魔導師」シリーズ刊行中の渡瀬さんの、読み切り新作。日本文学史上にその名を残す、源氏物語の作者・紫式部(藤式部)が関わることになった、四人の歌人と四季を巡る四つの物語です。

 作品の雰囲気としては「陰陽ノ京」に近い作品でした。むしろ、あれに輪をかけて地味だった気も。一応タイトルに「物の怪」の文字はあるものの、実際に話に絡んでくるのは物の怪という言葉では大仰に感じてしまうような怪異――それこそ、人の心にある不安やらなにやらが形になって現れたモノだったし。そういった怪異に、藤式部が娘に憑いた亡き姉に導かれるなどして向かい合うという展開の短編集。しっとり静かで味わい深い、素敵な雰囲気の作品でした。
 しかし、そんな雰囲気の作品なのに、登場人物はさりげに豪華だったなぁ。中心となる藤式部をはじめ、伊勢大輔や和泉式部、中宮彰子や藤原道長などなど、当時に活躍した人たちがさらりと、脚色されすぎることもなく当然に「そこにいる」人として登場してくるのが良い感じでした。あと、「陰陽ノ京」好きとしては、あちらで登場した人たちの名前がちらりと出てきたのは嬉しいファンサービスでしたね。とりあえず吉平さんは奥さんについて詳しく説明をですね……(略)

作品名 : 源氏 物の怪語り
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著者名 : 渡瀬草一郎
出版社 : メディアワークス文庫(メディアワークス)
ISBN  : 978-4-04-886367-4
発行日 : 2012/1/25

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