タイトルと表紙イラストに「ハーレムものなんだろうか?」と思いつつ、作者の人が作者の人だから単なるハーレムものじゃないだろうと判断して購入してみた一冊。結果として、判断に間違いはなかった。
大財閥・遠々原の創始者に養子として引き取られた主人公が、ある日突然花嫁候補だという5人の少女と同居することになり……という冒頭で、ここだけ見れば普通のハーレムものなんですが。実はこの花嫁候補たちは遠々原――ひいては主人公を破滅させてやりたいと思うほど憎んでる。ただ、一人だけは主人公を愛している。主人公に選ばれた花嫁候補は、遠々原家を自由にする権利を得る――という、人生のかかったゲームの幕開けだった、という話。
この主人公がほどよく人でなしというか。花嫁候補が迫ってきても、それに流されず状況やらなにやらを判断していく姿は冷静を通り越して冷徹にすら見えなくもないのですが、根っこの部分で人情を否定しきっていないんですよね。そんなこんなで、そうできる余裕があったとはいえ、今回「後味が悪いじゃないか」と彼が選んだ行動はよいものだったと思いますよ、うん。
また、花嫁候補たちも、目的を達成するために私情を殺して主人公に気に入られなければいけないわけで……普通ならはいはいハーレムなラブコメね、と思うやりとりもそのまま受けとれずうすら寒く感じるという。ある意味、第三者的立ち位置にいる主人公の幼馴染みにして共犯者のメイドとのやり取りのほうがよほど心なごむかも。
ゲームはひとつ状況が進展したとはいえ、まだこれから。主人公の目的もまだぼんやりとしか見えてないし、続きが出るといいなーと思います。