中世ヨーロッパ風異世界を舞台に諜報員として仕込まれた女性が陰謀の狭間で活躍するファンタジー小説、「クシエルの使徒」第3巻かつ第2部完結編。
前巻のラストが「うわー……」としか言いようがない状況だったので一体どうなるんだと思ったけれど、絶体絶命の危機を乗り越えたあとはなんだか妙に安心した気分で読んでた気がする。……いや単に、流石に3巻目だしここから逆転だ!と思っていただけともいいますが(地味にかわいくない読み方だな)
ともあれ、王手の一歩手前まで進んでいるメリザンドの陰謀をなんとか阻止するべく各地を渡り歩いて反撃の算段をつけるフェードル。このあたりの展開は、なんというか、いまさらだけどフェードルってタフだよね、とか、人脈っていうのは偉大だ……とかそんなことをつらつらと思ったり思わなかったり。で、ついに始まった逆転劇。その流れはけして意外なものではありませんが、それだけに無理なく納得できるし、これまで劣勢に立っていたフェードルたちがまさに怒涛の如く巻き返していく展開には素直にテンションがあがりました。さらに「使徒」のどうなるんだ要素の一つだったジョスランとの関係も収まるところに収まるなど、大方の問題がすっきり片付いて一安心。……まぁ勿論、シリーズがまだ続く以上火種は残ってはいるわけですが。
ああしかし、第1部の時も思ったけれどフェードルの一人称であるが故に直接的には語られない部分も多々あるのが勿体ない。サブキャラ(特にメリザンド)視点での物語というか「その時何が起きていたのか」な話ももう少し知りたいんだけどなぁ。
さて、続く第3部「クシエルの啓示」は6月からこれまで同様三分冊で翻訳開始予定とのこと。巻末解説によれば、次は10年後の話になるらしい……つまり、今回はその存在だけが取りざたされていた「彼」も表に出てくることになるのかな。しかも予定されている第1巻のサブタイトルが「流浪の王子」ということは、もしかしなくてもヒアシンス再登場フラグか!? ともあれ、どんな展開になるのか楽しみです。