『カラクリ荘の異人たち4 春来るあやかし』[霜島ケイ/GA文庫]

 「あちらとこちら」が混じり合う場所、空栗荘を舞台にした、少年の心の成長物語、第4巻にして最終巻。さほど親しくないクラスメイトからの突然の問いかけから始まる「東風」、アカネと親しくなった、古い洋館に暮らす老婦人の「猫探し」を手伝うことになる「菜の花いろの灯をともし」、そして表題作「春来たるあやかし」の三話収録。

 ああ、綺麗に終わったなぁ、と。それが読後真っ先に思ったことでした。既刊と同じく派手さはないけれど、けれども、沁み入るように伝わってくる温かいものが実に心地よい。特に今回は、太一が空栗荘で過ごした時間、関わった人や妖たちとの関係等が凝縮されているようで。いろんなものの積み重ねが、太一が目をそらしていた心の傷に向き合うきっかけになって……うん、実に良かったです。正直、それ以外の言葉が思い浮かばないぐらいだ。
 あと、この作品の妖と人との関係というか。相手が「違う」と理解したうえで、それでも隣人として暮らしている、そういう距離の描き方がやはり好きだなぁ、と思いました。

 時は過ぎ、春が来て、また新しい1年が始まる。太一も、今度はちゃんと自分の意志で居場所を選んで、巡る季節を、少し不思議で楽しい日々を友達たちと過ごしていく。そんな光景を容易に脳裏に思い浮かべることができる、素敵な終幕でした。

作品名 : カラクリ荘の異人たち4 春来るあやかし
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著者名 : 霜島ケイ
出版社 : GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN  : 978-4-7973-5894-0
発行日 : 2010/4/15

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