「天冥の標」第2巻。遥か未来の物語であった1巻から時間の針は巻き戻され、冥王斑と呼ばれる謎の疫病のパンデミックが起こった現代地球を舞台にした物語。
なんというか、1巻はSF小説として普通に楽しみましたが、2巻はしんどいなぁ……と思いながら読みました。「白鳥熱の朝に」もそうでしたが、少し先にこういう事態が起きる可能性もなくはないだけに、そこで描かれる群集心理に「ああ……」と思ってしまうんでしょうね。自分もそうしかねないと分かっているだけに、軽く鬱になります。
そんなこんなで随所で凹みつつも医師や患者等、それぞれの立場で疫病と向かい合う様子が丁寧に描かれていて、面白いというか、「この先彼・彼女たちはどうなるんだろう。少しでも光は見えるんだろうか」と、ハラハラしながら興味深く読みました。同時に、未来とのリンクを感じさせる単語等がちらほらと見受けられ、おお、と思ったり。え、でも800年後まで……なんてことはないよね……?(なんだか嫌な想像をしてしまったらしい)
この「始まりの物語」ではのちの因縁の発端が生じたというところで幕を閉じましたが、未だ不明なところも多く。このあとにどのような出来事が起き、「メニー・メニー・シープ」に繋がっていくのか。何はともあれ、続きの巻が待ち遠しい限りです。
作品名 : 天冥の標2 救世群
著者名 : 小川一水
出版社 : ハヤカワ文庫JA(早川書房)
ISBN : 978-4-15-030988-6
発行日 : 2010/3/5