『ミストスピリット―霧のうつし身 (1)遺されし力』[ブランドン・サンダースン/ハヤカワ文庫FT]

 「Mistborn trilogy」の第二部にあたる『Mistborn: The Well of Ascension』、翻訳開始。なお、訳者あとがきによるとシリーズタイトルが「ミストボーン」ではなく「ミストスピリット」になったのは大人の事情らしい。

 支配王が斃れて一年。青年貴族エレンドが王位についた〈終の帝国〉の都ルサデルは、しかし、平穏とは程遠い状況にあった――という状況から幕を開けた第二部。第一部では脇役というかサブキャラぐらいの立ち位置だったエレンドが、もう一人の主役といってもいいような扱いになっててちょっと吃驚しました。まださすがにケルシャーほどの存在感はありませんが、ヴィンと同じく彼もこれから(良くも悪くも)変わっていくんだろうなー(そして、エレンドの変化にちょっと複雑な気分になるヴィンがかわいかった) ヴィンはあらすじで姿が見えなかったので「まさかの主役交代か!?」と勝手に思ったりもしましたがそんなことはなく、今回もメイン。エレンド関係や周囲の評価に揺れたり戸惑ったり歳相応の顔を見せる一方で、「霧の落とし子」として自在に王都を駆ける姿がとても格好良かったです。彼女の相棒となるわんこ(というかなんというか)も捻くれかわいい。その他、第一部からの登場人物たちが思わぬ面を見せたりする一方、新たな登場人物も物語を盛り上げていってくれます。
 話としては、まだ前哨戦というか、状況の説明と整理をしつつ新しい展開へ向けての伏線を張り巡らしていってる段階。エレンドは主に政治的な問題に、セイズドは歴史の中に埋もれ失われた記録に、そしてヴィンは最強の「霧の落とし子」としてエレンドの護衛を務めたり支配王の記録に当たってみたりと、様々な問題に対処していくことに。第一部はエンジンかかるまでに若干時間がかかった印象があるのだけれど、「ミストスピリット」は最初から話がぐいぐいと進んで行って面白い面白い。ある意味、第一部が第二部のエンジン役を果たしているのかなぁとも思う。

 次巻で役者が揃うとのことなので、そこから本格的に話が動いていくのでしょうが、いったいどんな展開が待っているのか。とても楽しみです。

作品名 : ミストスピリット―霧のうつし身 (1)遺されし力
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著者名 : ブランドン・サンダースン
出版社 : ハヤカワ文庫FT(早川書房)
ISBN  : 978-4-15-020509-6
発行日 : 2010/2/10

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